タイベック

タイベック（Tyvek®）

タイベック（タイヴェック）は、アメリカの化学企業デュポンによって開発された高密度ポリエチレン繊維で作られた不織布です。この素材は、その優れた特性から、さまざまな分野で広く利用されています。

歴史

タイベックは1955年、デュポンの布部門に所属するJim Whiteによって発明されました。発明から1年以内に特許を取得し、その後数年間にわたって性能や生産方法に関する研究が進められました。1965年には商標登録され、1967年の4月には商業販売が開始されて以降、さまざまな用途での利用が広がっています。

特性

タイベックは、印刷が可能な一方で、リサイクルの際にはプラスチックとして扱われるため、他の紙製品とは異なる処理が必要です。この不織布は、化学薬品やウイルス、さらには汚れた血液に対する防護力が高く、耐久性や洗浄性にも優れています。特に医療の分野では、滅菌処理に耐えることが求められ、ガンマ線照射や酸化エチレンガスにも耐えられる特性を持っています。

用途

紙の代替

タイベックは、紙の代わりとしても多く使われています。例えば、コスタリカ、マン島、ハイチでは紙幣として、ニュージーランドでは運転免許証として用いられています。また、イベントの入場証明や支払証明に利用されるビザバンドは、タイベック製で引き裂きに強く、水濡れに対する耐性があります。

個人防護具（PPE）

タイベックを使用したつなぎは、機械作業者や化学関係者、医療従事者、クリーンルームでの業務に従事する人々によって利用されます。ただし、放射線作業に対しては十分な保護機能を持たないため、必要に応じてポリマーコーティングなどを施された別の製品が使用されることがあります。デュポン社からは、CBRNE（生物・化学・核・放射性物質・爆発物）に対応するタイケムという製品ブランドも展開されています。

新型コロナウイルス感染症の影響

2020年以降、新型コロナウイルスの流行によって医療用のタイベック製装備が不足する事態が発生しました。タイベックは本来使い捨てを想定していますが、デュポン社は感染症対策として、表面のみが汚染されている場合や、破れ・変質がない限り、クリーニングと消毒を行うことで複数回の再利用が可能であると述べています。具体的な手順としては、以下のような方法が推奨されています。

• - 温水と中性食器用洗剤を使用し、柔らかいブラシで外面の汚れを取り除く。
• - 消毒には、アメリカ疾病予防管理センターのガイドラインに従い、希釈した家庭用漂白剤や70%以上のアルコールを含む溶液を用いる。一般的な家庭用の除菌洗浄剤も効果的です。
• - EPA登録の抗菌製品中から希釈した過酸化水素や次亜塩素酸ナトリウムを使用して消毒することが可能であり、製品の説明に従って使用することが重要です。
• - クリーニング後は、衣類をきれいな真水で十分にすすぎ、すぐに乾かすことが推奨されています。

タイベックは、これらの特性を背景に、今後も多様な用途での活躍が期待されています。

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