タルカス

エマーソン・レイク＆パーマーの代表作『タルカス』：怪物と音楽の壮大な叙事詩

1971年5月、イギリスで、そして同年6月14日にはアメリカで、エマーソン・レイク＆パーマー（ELP）のセカンドアルバム『タルカス (Tarkus)』がリリースされました。このアルバムは、後の『展覧会の絵』や『恐怖の頭脳改革』と並び、ELPの代表作として、現在も高い評価を得ています。

アルバムのプロデュースはグレッグ・レイクが担当し、楽曲はメンバー3人によって作曲されました。最大の特徴は、20分を超える大作である表題曲「タルカス」です。この組曲は、火山から現れた怪物タルカスが地上を破壊し、最終的に海へ帰っていくという物語を描いています。アルバムジャケットにも描かれたタルカスは、アルマジロのような体に戦車が融合した、非常に風刺的な姿をした想像上の生物です。キース・エマーソンによると、「タルカス」という名前は、帰宅途中に突然思いついたもので、特別な意味はなかったとのことです。

タルカス最後の敵として登場する「マンティコア」は、人の顔、ライオンの胴体、サソリの尻尾を持つ怪物です。その名前とシルエットは、後にELPが設立したレーベル「マンティコア・レコード」の名前とロゴにも使用されました。興味深いことに、作詞を担当したレイクは当初、この組曲のコンセプトに興味を示さず、エマーソンにソロでやるべきだと冷たく突き放したと言われています。

「タルカス」組曲全体を通して使用されている「ド・ファ・ソ・シb・ミb」というコード進行は、エマーソンの作品に多く見られるものであり、ELPサウンドの象徴として知られています。

アルバムのA面は「タルカス」組曲で占められていますが、B面は様々なスタイルの楽曲が収録された小品集のような構成となっています。「ビッチズ・クリスタル」や「タイム・アンド・プレイス」などは、後のツアーでも演奏されました。「ジ・オンリー・ウェイ」では、バッハの「トッカータとフーガヘ長調」と「平均律クラヴィーア曲集」からの楽曲が、パイプオルガンやピアノ・トリオによって演奏されています。「限りなき宇宙の果てに」はエマーソンとカール・パーマーによる共作のインストゥルメンタルで、ピアノが中心となっています。「アー・ユー・レディ・エディ」は、レコーディング・エンジニアのエディ・オフォードへのユーモラスなオマージュとして作られたロックンロールです。

2012年には、新しいステレオミックスと5.1サラウンドミックスを含むリイシュー版が発売され、現在も多くのリスナーに親しまれています。

『タルカス』は、商業的にも成功を収め、イギリスのアルバムチャートで1位、アメリカのチャートでも9位を記録しました。ELPにとって、唯一のチャート1位獲得作品という記録も残しています。

このアルバムは、単なるロックアルバムにとどまらず、クラシック音楽のエッセンスを取り入れ、プログレッシブ・ロックの先駆的な作品として、多くのミュージシャンや作曲家に影響を与え続けています。その影響の広がりは、吉松隆による管弦楽編曲版や、様々なアーティストによるアレンジ、さらには日本のプログレッシブ・ロックバンドによるパロディ楽曲の制作などからも明らかです。 長野県にあるスナックの名前にもなっているなど、その人気は時代を超えて続いています。 『タルカス』は、ELPの革新的な音楽性と、想像力豊かな物語性を融合させた、まさに不朽の名作と言えるでしょう。

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