チップジェット

チップジェットについて

チップジェット（Tip jet）は、ヘリコプターの主回転翼を駆動するための技術です。この方式では、各輪の先端に噴射口が存在し、その噴流の反作用を使って回転翼を回します。このタイプは、主に「翼端噴流式」とも呼ばれ、特に従来の駆動方式と比べてトルクの発生がないため、テールローターが不要という特長があります。

仕組み

チップジェット機構にはいくつかのバリエーションが存在します。一つは、圧縮機で生成された圧縮空気を配管を介して回転翼の噴出口に導く「冷風チップジェット」の形式です。また、圧縮空気と燃料を混合して燃焼させ、噴流の反動で駆動する「アフターバーナー式」や「冷風チップジェット」があります。さらに、高温・高圧の排気ガスを使用した「ホットサイクル機構」も存在します。加えて、機体の外部にラムジェットやターボジェットエンジンを取り付ける方式もあり、さらには外部設置のロケット推進装置による形式も見られます。

外部にエンジンを設置する利点は、運動エネルギーを蓄えることが可能となり、自動回転による着陸の際に有利であることです。ただし、その反面、空気抵抗が大きいため、エンジン停止時には非常に危険です。

歴史

チップジェットの歴史は意外に古く、哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインが1910年に特許を取得し、ヘリコプターの先駆け的な機構を提案していました。さらに第二次世界大戦中のドイツでは、フレデリック・フォン・ドブルホフがラムジェットを用いたヘリコプターを提案し、初のチップジェット式ヘリコプター「WNF 342（V1）」が1943年に製造されました。

戦後、アメリカに試作機が持ち込まれ、ドブルホフはマクダネル・ダグラスでXV-1を開発しました。英国のフェアリー社では、チップジェットエンジンを搭載した様々な機体が開発されていますが、これまでに実用化に至ったものはほとんどありません。

日本でも1950年代に幾つかのチップジェット機が試作されましたが、成功した例は少なく、実用化には至りませんでした。

利点と欠点

チップジェットの利点には、複雑な伝達機構による故障頻度が低いことや、テールローターの必要がないため操縦者の安全性が向上する点が挙げられます。

一方で、チップジェットにはいくつかの欠点も存在します。例えば、燃費が悪く、騒音も通常のヘリコプターに比べて大きいです。特に、翼端ラムジェットエンジンの場合、発動機停止時にオートローテーションが困難になるため、安全性のばあい特に留意が必要です。

チップジェット搭載機

これまでに試作・開発されたチップジェット搭載機には、カマン・エアロスペース K-17やドルニエ Do 132、マクダネル XV-1などがありますが、実用機の数は非常に限られています。特に、チップジェットは燃費や構造上の問題から広く採用されていないことが実情です。

結論

チップジェットはヘリコプター技術の一翼を担う革新的な機構ですが、燃費や騒音の課題が依然として残されており、今後の技術革新が期待される分野です。

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