デカフェ

デカフェとは

デカフェ（decaf）とは、カフェインを含有する飲食物からカフェインを取り除いたもの、またはカフェインを添加しないことでカフェインを含まなくなったものを指します。ディカフェとも呼ばれます。日本では、特にカフェインレスコーヒーを指すことが多いですが、お茶やコーラなど他の飲料にもデカフェ製品が存在します。

カフェインレスコーヒーは、脱カフェイン処理を施したコーヒー豆や抽出液、インスタント[[コーヒー]]のことです。欧米では健康上の理由からカフェインを避けたい人に広く受け入れられており、世界のコーヒー市場の約10%を占めています。しかし、製造過程でカフェイン以外の成分も失われやすく、味や香りで通常のコーヒーに劣るため、カフェインを避けたい時以外には選ばれにくいのが現状です。

ヨーロッパでは、デカフェの基準が設けられており、コーヒー豆中のカフェイン含有量が0.2%以下（インスタント[[コーヒー]]は0.3%以下）でないとデカフェと表示できません。日本では、欧米からの輸入品が流通していますが、需要は少なく、カフェイン含有量の規定もありません。

デカフェの開発は、コーヒーにおけるカフェインの役割を解明する上で重要な役割を果たしました。例えば、コーヒーの苦味成分がカフェインだけではないことや、カフェインの中枢神経興奮作用、腸管蠕動促進作用などがカフェイン以外の成分によることなどが、デカフェと通常のコーヒーを比較した実験から明らかになりました。

脱カフェイン法

脱カフェイン法は、精製後のコーヒー生豆からカフェインを除去する方法です。カフェインが脂溶性である性質を利用し、有機溶媒、水、または超臨界流体二酸化炭素などの溶媒に浸してカフェインを選択的に抽出します。抽出されたカフェインは、医薬品や工業用に使用されます。

脱カフェイン法は、最初に開発されたデカフェ製造法ですが、カフェインの選択的な抽出には限界があり、他の成分の損失が避けられません。特に、香気成分の損失は大きな問題点です。

有機溶媒抽出

有機溶媒抽出法は、蒸気で膨潤させたコーヒー生豆を有機溶媒に浸してカフェインを抽出する方法です。カフェインが疎水性が高い性質を利用し、選択的に抽出します。

以前はベンゼン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどが使用されていましたが、残留の可能性が問題視されたため、現在はジクロロメタンが主に使われています。安価な方法ですが、カフェイン以外の成分の損失が大きく風味で劣る点と、有機溶媒に直接触れることへの安全性の懸念があります。

水抽出

水抽出法は、コーヒー生豆を水に浸してカフェインを抽出した後、有機溶媒でカフェインを除去する方法です。カフェインを除いた水溶液を再度生豆に戻すことで、カフェイン以外の成分を戻す仕組みになっています。

この方法は、有機溶媒が直接生豆に触れないため安全性が高く、二段階抽出によりカフェイン以外の成分の損失が少ないという利点があります。また、使用した有機溶媒の再回収も容易で経済的です。

超臨界二酸化炭素抽出

超臨界二酸化炭素抽出法は、超臨界流体状態の二酸化炭素を用いてカフェインを抽出する方法です。超臨界流体は、気体と液体の両方の性質を持つため、コーヒー豆内部への浸透性が高く、成分抽出効率に優れています。

二酸化炭素は、常温常圧に近い条件で超臨界状態にでき、化学反応を起こしにくく、抽出後の除去も容易なため、安全性が高いとされています。この方法は、有機溶媒抽出法の欠点を補う優れた脱カフェイン法として注目されています。

カフェインレスコーヒーノキ

脱カフェイン法における風味の損失を解決するため、カフェインを含まないコーヒーノキを育種する試みも行われています。遺伝子組み換えや従来からの交配による品種改良が進められており、バイオベンチャービジネスからも注目されています。

遺伝子組み換え

2003年、奈良先端大のグループが遺伝子組み換え技術を用いて、カフェイン合成酵素の発現を抑制するsiRNAを導入し、カフェインレスコーヒーノキの作製に初めて成功しました。しかし、使用されたコーヒーノキの品種やカフェイン含有量には課題が残っています。

育種

従来からの交配による品種改良でも、カフェインレスコーヒーノキの作製が試みられてきました。2004年にはブラジルの研究グループが、カフェイン含有量が非常に少ない品種の作製に成功しました。この品種は、欧米のデカフェ基準を満たしますが、カフェインの前駆体であるテオブロミンが多く蓄積しているという特徴があります。

歴史

1819年：ルンゲがコーヒーからカフェインを単離。
1903年：ドイツで脱カフェイン技術が考案。
1941年：ベリーとウォルターズが水抽出法を開発。
1974年：超臨界二酸化炭素によるカフェイン抽出法が開発。
1978年：西ドイツのHAG社が超臨界二酸化炭素抽出を工業化。
2000年：芦原らが茶のカフェイン合成酵素の遺伝子を同定。
2001年：佐野らがコーヒーノキのカフェイン合成酵素の遺伝子を同定。
2003年：佐野らが遺伝子組み換え技術を用いたカフェインレスコーヒーノキの作製に成功。
2004年：ブラジルでカフェイン含量の少ないアラビカ種のコーヒーノキの育種に成功。

参考文献

[参考資料]

関連項目

ザンカ
* ノンアルコール飲料

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