ドイ

株式会社ドイは、かつて日本で写真用品店チェーン「カメラのドイ」を運営していた企業です。本社は福岡県福岡市博多区に置かれていました。1949年に土居君雄氏が写真用品の卸売業者として創業したのが始まりです。1956年に株式会社として法人化し、1959年には福岡市で「カメラのドイ」を開店、小売業に参入しました。

1961年には福岡市に現像所を設置し、DPE事業（写真の現像・焼き付け）にも進出。カメラの割賦販売を導入するなど、積極的な経営戦略で事業を拡大しました。その後、関東地方や関西地方にも店舗を拡大し、1975年には東京都新宿区に進出。ヨドバシカメラなどの競合店との間で激しい価格競争を繰り広げ、「新宿カメラ戦争」とまで報道されました。これにより、「カメラのドイ」の知名度は全国的に向上しました。

同年、海外にも進出し、ニューヨークのカメラプレイス、西ドイツのカメラ製造会社プラウベルを買収しました。1983年時点では、資本金4億4800万円、従業員860人を擁し、国内に5社、国外に2社の関連会社を抱えるまでに成長しました。小売部門の「カメラのドイ」は国内に57店舗、DPEサービスを行う「セブンアワーフォト」などのサービス拠点は国内外に100ヶ所以上ありました。また、カメラ製造部門では「マキナ67」などのカメラを製造していました。

1987年にはニューヨークから事業撤退しましたが、1989年の最盛期には、本社のある九州地方をはじめ、近畿地方や関東地方など、全国に約130店舗を構え、カメラ専門店チェーンとして国内3位の規模に成長しました。当時は、カメラや写真用品だけでなく、家電製品や情報機器も取り扱っていました。また、「セブンアワーフォト」などの小型店舗も首都圏を中心に多数展開していました。土居氏の出身地である広島市内にも複数店舗を出店しています。

しかし、その後、業界はヨドバシカメラ、さくらや、ビックカメラといったVSBと呼ばれる3社を中心に、カメラ店から大型家電店へと移行していきました。株式会社ドイの渋谷旗艦店は、その大型化の先駆けとなりました。1990年10月2日には、創業者の土居氏が病気のため急逝。バブル崩壊後の消費低迷や競合激化、1990年代末頃からのフィルムカメラからデジタルカメラへの急激な変化により、売上は伸び悩みました。

2000年には本店を東京に移し、2002年には事業をDPEと中古カメラ販売に絞り込みました。しかし、2003年8月に経営が行き詰まり、民事再生法の適用を申請。負債額は55億円に達しました。2004年に再生計画が認可され、正社員29人、11店舗での再建を目指しましたが、2006年3月8日に再建を断念し、破産手続きを開始しました。

日本国内の「カメラのドイ」の店舗は消滅しましたが、撤退したニューヨークでは、2024年現在でも51 East 46 Streetに「Doi Camera」の店名で営業を続けている店舗が存在しています。

株式会社ドイは、テレビ番組の提供も行っていました。代表的な番組として、「北野ファンクラブ」（フジテレビ）、「サンケイ新聞ニュースFNN→産経テレニュースFNN」（テレビ新広島、1980年代から1990年代前期の日曜昼枠）、「ANNニュースライナー」（テレビ朝日、関東ローカル、1980年代）、「鶴瓶上岡パペポTV」（よみうりテレビ）などがあります。

CMには、磯崎亜紀子さん、王貞治さん、そして、創業者と同じ苗字であることから土井正三さんと土井淳さんも出演していました。また、1998年にはマイケル・ジャクソン氏が、2004年にはペ・ヨンジュン氏が新宿の店舗を訪れています。

株式会社ドイは、日本のカメラ業界における一つの時代の象徴として、その歴史は語り継がれることでしょう。

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