トリックス

ドイツの老舗玩具メーカー、トリックス：その歴史と製品群

トリックス (TRIX) は、1838年、ドイツのフュルトでヨハン・ハフナーによって創業された、由緒ある玩具メーカーです。当初は鉛の玩具を製造していましたが、幾度かの買収や合併を経て、1950年に現在の社名「トリックス」へと至ります。1997年にはメルクリン傘下となり、現在もHOゲージ鉄道模型を中心に、独自のブランドとして活動を続けています。

創業から第二次世界大戦まで：幾多の変遷

ヨハン・ハフナーの死後、息子のコンラート、そしてアルブレヒト・ステッドラーへと経営が引き継がれます。その後、ビングやマックス・アーランガーらによる買収を経て、1925年にはアンドレアス・フェルトナー社と合併し、「合同玩具工場 アンドレアス・フェルトナー & J・ハフナーの後継者」となります。

1928年には株式公開、1929年にはシュテファン・ビングらによる経営権掌握を経て、金属製組み立て玩具「トリックス・メタルバウカステン」の開発・販売を開始。メカノに類似したこの製品は、部品の穴が3列に配置されている点が大きな特徴で、ヨーロッパ全土で高い人気を獲得しました。

1930年代には、ビング時代の技術を基に、交流三線式OOゲージ鉄道模型「トリックス・エクスプレス」を開発。これは1/87縮尺、軌間16.5mmを採用し、多くのモデルが製造されました。イギリス市場への進出も果たし、独自のブランド「TTR」として展開されました。しかし、ナチス政権下のユダヤ人迫害を受け、シュテファン・ビングは会社を離れ、第二次世界大戦中は戦時物資の生産にシフトせざるを得なくなりました。空襲による工場の損壊も大きな打撃となりました。

戦後復興と発展：新製品とブランド戦略

戦後、トリックス・エクスプレスの生産を再開し、順調に業績を回復させます。1950年には「トリックス 合同玩具工場」となり、直流モーターを採用した新製品を投入。入門者向けのセットも発売され、市場での地位を確固たるものとしました。1959年には、縮尺1/180の手押し式鉄道模型「ミニトリックス」を発表し、後に電動式Nゲージへと発展させます。

1960年代には、鉄道模型市場の拡大とともに、トリックスも盛況を極めました。直流二線式モデル「トリックス・エクスプレス・インターナショナル」や、他社との提携による新製品の開発など、積極的に事業を展開しました。しかし、1970年代以降は市場の競争激化や経営悪化に見舞われ、買収合併を繰り返します。

メルクリン傘下へ：新たな展開

1997年、メルクリン傘下に入ったトリックスは、現在もHOゲージ鉄道模型のブランドとして活動を続けています。メルクリンとは異なる商品展開を行い、特にバイエルン王立鉄道の車両など、高品質な製品を提供し続けています。また、ミニトリックスブランドによるNゲージ鉄道模型も展開されており、幅広い層の愛好家から支持されています。

代表的な製品

トリックス・メタルバウカステン: 金属製組み立て玩具。
トリックス・エクスプレス: 三線式OOゲージ・HOゲージ鉄道模型。
トリックス・エクスプレス・インターナショナル: 直流二線式HOゲージ鉄道模型。
ミニトリックス: Nゲージ鉄道模型ブランド。
* トリックス・トレイン: イギリスで展開されたOOゲージ鉄道模型。

他社との連携

トリックスは、リュコー、レーヴァ、リバロッシ、フライシュマンなど、数多くの企業と提携し、製品開発や販売において協業関係を築いてきました。

まとめ

180年以上の歴史を持つトリックスは、数々の変遷を経て、現在も独自のブランドとして存在感を示しています。その歴史と製品群は、ドイツの玩具文化、そして鉄道模型の歴史を語る上で欠かせない存在となっています。今後も、その伝統と技術を継承し、新たな魅力を生み出し続けることが期待されます。

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