トレンチコート

トレンチコートの歴史と特性

トレンチコート（trench coat）は、冬季や雨の日に着用されるオーバーコートとして知られています。その起源は、第一次世界大戦中のイギリス軍の需要にさかのぼります。寒い欧州での厳しい戦闘に耐えうる防水型の軍用コートが求められたことから、このスタイルは生まれました。さらに、その原型となるデザインは1900年頃から存在しており、第一次大戦がこのコートの普及を加速させたとされています。

名称の「トレンチ」は、戦争時の泥濘地で行われる塹壕戦において、このコートが優れた耐候性を発揮したことに由来しています。トレンチコートは、戦後も軍服の名残を残しつつ、ファッションとして定着していきました。特に、イギリスのバーバリーとアクアスキュータムの製品が元祖とされ、これらのブランドは現在も高い評価を受けています。

トレンチコートの特徴

トレンチコートには通常、ギャバジンやウールといった生地が使用されますが、最近では合成繊維やレザー製のものも増えてきています。肩にはボタン留めのショルダーループがあり、水筒や双眼鏡を吊るすために役立つデザインになっています。このストラップは、仲間を物陰に引き込む際にも利用されています。このような機能は、今日の軍服や警察官の制服にも見られます。

襟元にはチン・ストラップがあり、寒風を防ぐために手首にもストラップが付いています。ウエスト部分にはベルトがあり、コートのシルエットを美しく整えつつ、腹部を暖かく保つ役割も果たしています。古典的なデザインでは、両腰にあるポケットは単なるスリット状になっており、内側に着込んだ上着のポケットに手を届かせるための工夫が施されています。

デザインの違い

トレンチコートは、シングルブレストとダブルブレストの2種類に大別されます。5つのボタンが2列並んだダブルブレストがクラシックなスタイルとして広く知られていますが、アクアスキュータムなどのブランドでは1列のシングルブレストタイプも展開されています。また、ベルトやショルダーストラップなどのディテールが省略され、シンプルなデザインのものも存在します。これにより、伝統的なトレンチコートとステンカラーコートとの違いが分かりにくくなる場合もあります。

トレンチコートの魅力

トレンチコートはその実用性だけでなく、見た目の美しさやスタイルの良さでも知られています。1930年代から、ハンフリー・ボガートやアラン・ラッドといった映画俳優がフィルム・ノワールでこのコートを着用したことで、一層その人気が高まりました。このことが、トレンチコートに「ハードボイルド」なスタイリッシュなイメージを植え付けたのです。

このように、トレンチコートは歴史を持ちつつも、今日のファッションシーンにおいても多くの人に愛され続けています。実用性とデザイン性の両方を兼ね備えたこのアイテムは、冬のファッションに欠かせない存在となっています。

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