トーリン・オーケンシールド

トーリン・オーケンシールド：誇り高きドワーフの王、その波乱の生涯

トーリン・オーケンシールド（Thorin Oakenshield）、本名トーリン2世は、J・R・R・トールキンの小説『ホビットの冒険』に登場する重要な人物です。彼は、かつて繁栄を誇ったドワーフの王国エレボールの正統な後継者であり、「山の下の王」と呼ばれるドゥリン一族の末裔です。しかし、ドラゴン、スマウグの襲撃によって王国を奪われ、一族は離散。トーリンは、いつか必ず王国を取り戻し、先祖の財宝を奪還するという強い決意を胸に生きてきました。

尊大さと内に秘めた苦悩

トーリンは、その挙措や物言いに尊大さが見られるものの、それは王としての威厳を保とうとする彼の意志の表れでもありました。一族の悲願を達成するためには、何としても王としての威厳を保ち、仲間を率いていかなければならなかったのです。しかし、その内面には、故郷を失った悲しみと、スマウグへの復讐心、そして一族を再興させなければならないという重圧が常にのしかかっていました。

エレボール奪還の旅

『ホビットの冒険』では、トーリンは13人のドワーフの一行を率い、魔法使いガンダルフの助けを得て、ホビットのビルボ・バギンズを「忍びの者」として雇い、エレボールを目指す旅に出ます。道中、トロールやゴブリンとの遭遇、闇の森でのエルフの捕縛など、数々の困難に遭遇しますが、トーリンは勇敢な戦士として、またリーダーとして、仲間たちを鼓舞し、導いていきます。

アーケン石を巡る葛藤

トーリンがエレボール奪還の旅で最も欲したのは、アーケン石と呼ばれるドゥリン一族の家宝でした。アーケン石は、「山の精髄」とも呼ばれる美しい宝石で、ドワーフたちにとって特別な意味を持つものでした。しかし、スマウグ討伐後、アーケン石を手に入れたビルボが、エルフ王スランドゥイルと人間のバルドとの交渉の切り札としてアーケン石を使ったことで、トーリンは激怒します。先祖代々の宝であるアーケン石を、自分の許可なく他人に渡したビルボの行為は、トーリンにとって許しがたい裏切りだったのです。

五軍の合戦と最期

アーケン石を巡る対立は、ドワーフと人間、エルフとの間で戦争を引き起こしかけます。しかし、ゴブリンとワーグの軍勢が攻めてきたことで、三者は一時的に休戦し、共通の敵に立ち向かうことになります（五軍の合戦）。トーリンは、この戦いで先頭に立って勇敢に戦いますが、深手を負い、瀕死の状態に陥ります。最期に、トーリンはビルボと和解し、自身の過ちを認め、ビルボの友情に感謝の言葉を述べ、息を引き取りました。彼の遺体は、アーケン石と共にエレボールに埋葬されました。

オルクリストとダインへの継承

トーリンは、トロルの洞窟で、かつてゴンドリンのエルフがオークとの戦いのために作った名剣オルクリストを手に入れます。この剣は、敵が近づくと光を放つ性質を持っており、トーリンの死後、彼の墓の上に置かれ、エレボールを守り続けました。トーリンの死後、「山の下の王」の称号は、彼の親族であるダインに引き継がれ、ダインはエレボールの再建に尽力しました。

映画作品におけるトーリン

ピーター・ジャクソン監督による映画作品『ホビット』三部作では、英国人俳優リチャード・アーミティッジがトーリンを演じました。アーミティッジは、トーリンの尊大さ、内に秘めた苦悩、そして勇敢さを巧みに表現し、多くの観客を魅了しました。映画では、トーリンのアーケン石への執着がより強調されており、その悲劇的な最期をより印象的なものにしています。

まとめ

トーリン・オーケンシールドは、『ホビットの冒険』において、重要な役割を果たすキャラクターです。彼は、誇り高く、勇敢な戦士である一方、過去の悲劇にとらわれ、アーケン石への執着に囚われるという、人間味あふれる一面も持ち合わせています。彼の波乱に満ちた生涯は、読者や観客に、希望と絶望、友情と裏切り、そして誇りと貪欲について深く考えさせるものとなっています。

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