ドローンビジネス

ドローンビジネスとは

ドローンビジネスは、小型の無人航空機、特にマルチコプター型のドローンを活用した事業全般を指します。当初は農薬散布を目的とした無線操縦ヘリコプターが主流でしたが、技術の進歩により、より小型で操縦が容易な電動マルチコプターが普及しました。近年では、陸上走行型や水中ドローンも登場し、その活用分野は多岐にわたっています。

概説

1980年代から、農薬散布の効率化を目的として無線操縦ヘリコプターが導入されてきましたが、操縦には高度な技術が求められていました。その後、技術革新が進み、小型軽量で操縦が容易な電動マルチコプターが普及しました。2014年には、Amazon.comが次世代配達用機械として「ドローン」という言葉を提唱し、一般にも広く知られるようになりました。日本においては、2015年に発生した首相官邸無人機落下事件が報道されたことで、ドローンの認知度が急速に高まりました。

2017年頃からは、マルチコプター型ドローンで培われた技術を応用し、陸上（ローバー型）、水上（ボート型）、水中（潜水艦型）といった、従来の「無人飛行機」の枠を超えたドローンが開発され、GPSが利用できない屋内環境での活用技術も進んでいます。

経緯

2010年にフランスのパロット社から発売された「ARドローン」は、スマートフォンやタブレット端末からWi-Fi接続で安定した飛行制御が可能であり、小型カメラによる映像ストリーミング機能も搭載していました。その後、SDKが提供されたことで、プログラミングによるドローンの制御も可能になりました。

2012年にDJI社から発売された「Phantom」は、ドローンの民生利用を一気に加速させ、日本でもホビー用途だけでなく商業用途での空撮が普及しました。DJIが一般消費者向けドローン市場で圧倒的なシェアを獲得したため、パロット社をはじめとする他のメーカーは、企業や組織向けのドローン製造にシフトする動きも見られます。

当時、アメリカ合衆国ではドローンの商業利用が禁止されていたため、商業利用を検討する企業はカナダやオーストラリアで実証実験を行っていました。しかし、2015年2月にアメリカ連邦航空局が商業利用を許可する方向へ舵を切り、以降は規制緩和が進んでいます。

日本における経緯

日本においては、首相官邸無人機落下事件を契機に航空法が改正され、ドローンに関する様々な規制が設けられました。これにより、企業がドローンを商業利用する際の基準が明確になり、商業活用の検討が進みやすくなりました。国土交通省は2016年3月に「UAVを用いた公共測量マニュアル（案）」を発表し、農林水産省も「無人航空機利用技術指導指針」を策定しました。総務省も「無人航空機における携帯電話等の利用」に関する方針を策定するなど、国主導でドローンの商業利用が推進されました。

2017年からは、ベンチャー企業だけでなく大手企業もドローンを活用した商業サービスを開始しています。2018年3月時点では、航空法や電波法によってドローンの飛行範囲が制限されており、商用利用領域も限定的です。しかし、経済産業省が発表した「総合物流施策大綱（2017年度〜2020年度）」では、ドローンの物流事業への活用が示されており、関係省庁が連携して規制緩和を進める方針です。

民間においても、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)がドローン物流のガイドラインとなる『JUIDA物流ガイドライン』（案）を公表するなど、業界全体でドローンの活用に向けた動きが活発化しています。2016年度の日本国内におけるドローンビジネスの市場規模は353億円でしたが、2017年度には前年度比42%増の503億円に成長しており、2024年度には3,711億円に達すると予測されています。

ドローンビジネスの構造

ドローン関連ビジネスは、一般消費者向けから企業や組織向けへとシフトしており、以下のような構造が形成されつつあります。

ハードウェア: ドローン本体の製造メーカー、機体制御センサー機器メーカー、データ取得機器メーカー、バッテリーやモーターなどの周辺機器・部品メーカーが含まれます。
サービス・ソフトウェア: サービスやソリューションを提供する企業、ソフトウェア開発企業が含まれます。
ドローン関連ビジネス: ドローンの操縦者育成スクール、練習場や飛行場、保険など、ドローンに関連するビジネスが含まれます。

ドローンの活用分野

ドローンを業務に活用する企業や組織は、農業、建設・土木、観光、自治体などに多く見られます。日本においては、特定の地域に偏ることなく、全国的に幅広く活用されています。

主な活用分野は以下の通りです。

農業: 農薬や種子の散布
宅配: 物流における配達
航空写真: 空撮や測量
警備: 監視や警備業務
捜索/救難: 災害時の捜索や救難活動

出典

春原久徳、中畑稔、インプレス総合研究所『ドローンビジネス調査報告書2018』インプレス、2018年。ISBN 9784295003601。

関連項目

ドローン宅配便

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