ドーラビーラ

ドーラビーラの概要

ドーラビーラ（Dholavira）は、インドのグジャラート州に位置するインダス文明の印象深い都市遺跡です。この遺跡は、ハラッパーやモヘンジョ・ダロと同等の重要性を持ち、地元では「Kotada Timba Prachin Mahanagar Dholavira」とも呼ばれています。ドーラビーラは、カッチ湿原のカディール島と呼ばれる地区にあり、その位置は北緯23度52分、東経70度13分にあります。雨季になると周囲の川が水を湛え、訪れる人々に独特な風景を提供します。

この場所には、紀元前2900年頃から人々が居住していた形跡があり、紀元前2100年ごろからは次第に衰退し始めました。その後、短期間の離脱を経て再び人々が戻り、最終的に放棄されたのは紀元前1450年ごろと見られています。ドーラビーラは、2021年に世界遺産として登録され（ID1645）、その歴史的価値が認識されることとなりました。

発見と発掘調査

ドーラビーラは1967年に発見され、インド亜大陸では5番目に大きなインダス文明の遺跡と考えられています。1989年以降、インド考古局のR・S・ビシュト博士の指導の下で継続的に発掘調査が実施され、その結果、都市の非常に高度な計画や建築物の構造が明らかとなりました。ドーラビーラは、古代の港湾都市であったロータルよりも先に開発されたとされ、全体の居住面積は100ヘクタールを超えています。

城塞と貯水槽の構造

ドーラビーラの重要な特徴の一つが、南西部に位置する「城塞」です。一辺が140m、高さが15m、幅が10mの城壁に囲まれ、威圧感あふれる姿を見せています。この城塞には、東西南北にそれぞれ城門があり、特に西側には外郭的な構造物、北側には350m×80mの広場的な施設があります。城塞の南西隅には直径4mの巨大な井戸があり、城塞中央を貫通する「通り」ともつながっています。

内部の城壁は内向きに傾斜し、北門や東門には雨受け装置が設けられています。この雨受けから集められた雨水は、地下の水路を経て外郭にある特別な貯水槽に送られる仕組みになっており、雨水は神聖な意味を持つと考えられていました。また、貯水槽は二箇所存在し、それぞれ異なる構造を持ち、今後の調査によってその関係性が明らかになることを期待されています。

建材と都市の特徴

ドーラビーラの建材は、周辺の石灰岩を用いており、モヘンジョ・ダロの煉瓦と同じ規模の石を積み上げる形で建設されています。石は水を浸透させる特性があり、建物全体が乾燥や暑さをしのぐ構造を持つと見られています。また、ビシュト博士は、ドーラビーラの街がピンク色に見えていた可能性についても述べています。こうした構造や色彩が、都市の独特な雰囲気を創出していたことでしょう。

字形と出土遺物

ドーラビーラでの重要な発見の一つとして、城塞の北門付近で見つかったインダス文字があります。この文字は、遺跡内で発見されたもので、十文字ほどの大きさがあります。インダス文字研究の権威であるアスコ・パルボラ博士は、これが太陽を象徴し、有力者や神の名前を示している可能性があると考えています。

また、出土された遺物には、インダス式印章、赤色土器、金や銀製品などが多数含まれ、ドーラビーラが交易の中心地であったことを示しています。考古学者たちは、ドーラビーラがグジャラートで採れる質の高い赤色の玉髄を加工し、輸出していたと推測しています。

世界遺産としての評価

ドーラビーラは、現存する文化的伝統や文明の稀な証拠、さらに人類史において重要な建築様式を示す例として、世界遺産登録基準を満たしています。今後もさらなる調査が行われ、他の都市との関係性や、当時の生活様式について新たな発見が期待されます。

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