ネオジオポケット

ネオジオポケット：SNKの携帯ゲーム機の歴史を彩る一台

1998年10月28日、SNK（当時）より発売された携帯型ゲーム機、ネオジオポケット（NEOGEO POCKET、略称：NGP、ネオポケ）。キャッチコピーは「WHAT'S YOUR GAME?」「ゴーイング・マイゲーム。」という、当時としては斬新なフレーズでした。本機は、SNKのアーケードゲーム機ネオジオの遺伝子を継承しつつ、携帯ゲーム機としての独自性を確立した、重要な機種と言えるでしょう。

開発と発売

ネオジオポケットの開発発表は1998年7月中旬。10月22日の発売を予定、そしてカラー液晶版であるネオジオポケットカラーの年内発売も同時に発表されました。発売に先立ち、10月8日には説明会と実機展示会が開催され、10月9日から11日にかけては東京ゲームショウ98秋に出展。大きな注目を集めました。その後、予定を6日遅らせて10月28日に発売開始。1999年3月19日にはカラー液晶版である「ネオジオポケットカラー」、同年10月21日には小型軽量化した「NEWネオジオポケットカラー」と、短期間でモデルチェンジを繰り返す展開となりました。

ハードウェアと仕様

本体中央には、モノクロ8階調表示の液晶ディスプレイを搭載。特徴的なのは、十字キーではなく、ネオジオCDコントローラーを彷彿とさせるメカニカルスイッチ式のジョイスティックを採用している点です。これはコマンド入力の容易さと、親指への負担軽減に大きく貢献しました。インターデザイン研究所の上田幸和氏によるデザインも、本機の個性に繋がっています。ただし、ボタンが2つしかないという点は、格闘ゲームのプレイにはやや難点でした。そのため、ネオジオポケットのソフトウェアはテーブルゲームの比率が高くなったと言えるでしょう。また、ネオジオポケットカラー専用のソフトは、モノクロ版では動作しません。

CPUは東芝製TLCS-900/Hコア（16ビット、最大クロック周波数6.144MHz）とZ80相当品（8ビット、クロック周波数3.072MHz、サウンド用）の2種類を搭載。内蔵RAMは16キロバイトで、16メガ連続アクセスが可能。メモリーバックアップ機能も備えていました。解像度は160ドット×152ライン。スプライトは8×8ドットで、3色＋透明1色、最大512枚同時表示に対応。サウンドは、矩形波3ch＋ノイズ1ch＋DAC 2chという構成です。メディアは最大32メガビットのROMカセットを使用。電源は単4乾電池×2本とリチウムボタン電池CR2032×1個。連続動作時間は約20時間（アルカリ電池使用時）でした。

外部端子としては、通信ケーブルなどを接続するための5ピンコネクター、ステレオヘッドホン端子、ACアダプター端子を備えています。操作系は、8方向ジョイスティック、A・Bボタン、OPTIONボタン、電源ボタン、音量調節つまみとシンプルです。内蔵ソフトとして、星占い、世界時計・カレンダー・アラーム機能、各種設定機能を搭載していました。本体サイズは122mm×74mm×24mm、重量は約130g（電池含む約160g）と、当時の携帯ゲーム機としてはコンパクトでした。価格は7,800円でした。

カラーバリエーションと周辺機器

本体色はプラチナブルー、プラチナシルバー、プラチナホワイト、カーボンブラック、メイプルブルー、カモフラージュブルー、カモフラージュブラウン、クリスタルホワイトなど、多様なバリエーションが用意されていました。中にはカーボン柄や迷彩柄など複数の色を使ったものや、半透明の機種も存在しました。

周辺機器としては、通信ケーブル、無線ユニット、ACアダプタ、ドリームキャスト接続ケーブルなどがあります。特に、無線ユニットは最大64人までの通信を可能としていましたが、対応ソフトは限られていました。

ソフトウェア

ローンチタイトルには『キング・オブ・ファイターズR-1』、『めろんちゃんの成長日記』などがあり、その後も『メタルスラッグ』シリーズ、『コットン -FANTASTIC NIGHT DREAMS COTTON-』、『パチスロアルゼ王国ポケット』、『SNK VS. CAPCOM 激突カードファイターズ』など、多くのタイトルが発売されました。開発元はSNKが中心でしたが、ADKや夢工房といったネオジオに関わっていた企業に加え、カプコンやセガなども参入していました。ソフト数は多くありませんでしたが、携帯ゲーム機としては珍しい作品群が揃っており、大人のユーザー層も意識したタイトルも存在しました。また、ゲーム業界で初めて、推奨年齢表示をパッケージに表記した点も注目に値します。

評価と販売終了後の動向

ネオジオポケットは、ゲームボーイカラーの発売から1週間後というタイミングでの発売、そしてカラー版の早期発表という状況から、モノクロ版の売れ行きは芳しくありませんでした。しかし、そのジョイスティックは高く評価され、1998年グッドデザイン賞を受賞しています。SNKの倒産後は、知的財産権がSNKプレイモアに譲渡されましたが、ネオジオポケットシリーズの展開は終了しました。

その後、過剰在庫はプライズゲームの操作機器として転用されたり、Nintendo Switch版『SAMURAI SPIRITS』の早期購入特典として、Nintendo Switch上で動作する『サムライスピリッツ!2』が配信されるなど、意外な形で再注目されることになりました。

まとめ

ネオジオポケットは、SNKの携帯ゲーム機としての挑戦であり、独自の個性と魅力を持つ機種でした。短命に終わった機種ではありますが、ゲーム史において、重要な1ページを飾ったことは間違いありません。そのジョイスティックや個性的なソフト群、そしてSNKの経営状況とその後までを含め、ネオジオポケットは、携帯ゲーム機の歴史を語る上で欠かせない存在と言えるでしょう。

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