ハスカップ

ハスカップ（学名: Lonicera caerulea subsp. edulis var. emphyllocalyx）は、スイカズラ科スイカズラ属に属する落葉低木で、クロミノウグイスカグラという標準和名を持ちます。一般的には「ハスカップ」という通称で広く知られています。

分類

ハスカップとして扱われる植物には、クロミノウグイスカグラの他に、母種であるケヨノミ、近縁種のマルバヨノミなどが含まれます。しかし、これらの変異が多く、識別が困難なため、分類の必要性については議論があります。本項では、特に断りがない限り、食用となる青色の果実をつけるスイカズラ属 Lonicera caerulea 全体を「ハスカップ」として扱います。

名称の由来

「ハスカップ」という名前は、アイヌ語で果実を意味する「ハㇱカㇷ゚（has-kap）」に由来します。これは「枝の上にたくさんなるもの」を意味する「ハㇱカオㇷ゚（has-ka-o-p）」が語源とされ、北海道に入植した和人によって胆振地方東部の方言として取り入れられ、定着したと考えられています。

1933年に苫小牧市の近藤武雄が「ハスカップ羊羹」を発売したことが、「ハスカップ」という名称が広まるきっかけになったと言われています。その後、地域住民の間で徐々に定着し、一般的な名称として普及しました。

日本における異名

アイヌ語では、細長い果実を指して「エヌミタンネ（enumitanne）」とも呼ばれていました。また、胆振地方東部では「エノミダニ」「ゆのみ」「よのみ」といった方言名も存在します。安平町や厚真町では、「谷地のグミ」を意味する「やちぐみ」という和名も使われていました。

英語圏での呼称

ハスカップが自生していなかったアメリカやカナダでは、「Haskap」の他に、「Blue Honeysuckle（青いスイカズラ）」、「Honeyberry」といった名称が用いられています。「Blue Honeysuckle」はロシア語からの直訳で、「Honeyberry」はアメリカの種苗会社が作った造語です。

分布

ハスカップは、水はけの良い火山灰土壌に自生します。北海道を中心とした北日本、シベリア東部、モンゴル、中国東北部、朝鮮半島北部などに分布しています。日本では、北海道の各地のほか、本州中部以北の高山にも自生しています。

北海道では檜山・留萌を除く各地で確認されていますが、他植物との競合に弱いため、連続的な分布ではありません。勇払原野はかつて自生数が多かったものの、開発によって自生地が縮小しました。

形態

ハスカップは、樹高1m前後の落葉低木です。葉は楕円形で対生し、全縁です。5〜7月頃に、淡黄色の漏斗状の花を葉腋に2つずつ下向きに咲かせます。

花後にできる果実は液果で、長さ2cmほどの細長いラグビーボールのような形をしています。2つの花の子房が合着しているため、1つの実に見えます。果実は成熟すると青黒色になり、表面にブルームを生じます。

利用

ハスカップの果実は食用となります。生食も可能ですが、酸味が強く、苦味がある場合もあるため、加工品として利用されることが多いです。また、果実の色素は草木染めの染料としても用いられます。

果実には、カルシウム、鉄、ビタミンC、α-トコフェロール、食物繊維などが豊富に含まれています。また、苦味成分としてロガニン、キナ酸なども含まれています。

栽培

ハスカップは、水はけが良く、風当たりの少ない場所を好みます。自家不和合性が高いため、受粉樹として他品種を混植する必要があります。また、剪定によって新しい枝を更新することで、収量を確保できます。

日本国内における利用の歴史

アイヌは古くからハスカップを食用としていましたが、特に重要視していたわけではありませんでした。明治時代以降、和人が入植するようになり、野生のハスカップを収穫して食用とするようになりました。摘んだハスカップは、塩漬けや砂糖漬けなどの保存食として利用されていました。

戦後、三星が「よいとまけ」を発売したことでハスカップの知名度が向上し、各地でハスカップの加工品が製造されるようになりました。

栽培品種

品質の均一化、良食味を目指して、研究機関や農園により選抜が行われ、栽培品種が誕生しています。主な品種として、「ゆうふつ」「あつまみらい」「ゆうしげ」「みえ」などが挙げられます。

日本国外における利用

ロシアでは、耐寒性とビタミンCの豊富さに着目し、19世紀末から栽培が始められました。アメリカやカナダでは、ロシア産・北海道産の苗木を輸入し、新品種の育成が行われています。

ハスカップは、北海道の風土が生んだ貴重な資源であり、地域を代表する特産品として、今後ますます注目されていくことが期待されます。

もう一度検索

ハスカップ