バビット

競走馬バビット：恋多き男の軌跡

2017年5月1日生まれの競走馬バビット。その名は、合金名であるバビットメタルと、人名から由来する。2020年のラジオNIKKEI賞とセントライト記念の優勝馬として知られ、競馬ファンには「恋多き男」の異名で親しまれているサラブレッドだ。本稿では、バビットの華麗なる競走生活から牧場での幼少期、そして血統背景にいたるまで、その生涯を多角的に紐解いていく。

誕生と幼少期

バビットの母、アートリョウコは門別競馬場と大井競馬場で6戦1勝の成績を残した後、繁殖牝馬として北海道日高郡新ひだか町の聖心台牧場で新たな人生を歩み始めた。数度の繁殖を経て、2017年、大北牧場でバビットが誕生する。アートリョウコはその後も繁殖を続け、2019年に8歳で亡くなるまで、計5頭の仔を産んだ。

バビットは牧場時代、「とても柔らかい動きで、素直な気性」の仔馬として知られていた。しかし、体格が大きくなかったことから、2018年のオータムセールに上場。グランデファームに150万円で落札された。ここで意外な一面が明らかになる。落札後、馬房へ戻るのを嫌がって放馬し、雨の芝生を滑るなど、想像を超えるやんちゃぶりで関係者を驚かせた。

グランデファームでの育成を経て、2019年の北海道トレーニングセールに出場。公開調教では22秒31という好タイムを記録し、宮田直也氏に500万円で落札。そして「バビット」と名付けられ、栗東トレーニングセンターの浜田多実雄厩舎へと預けられた。

競走馬としての活躍

2019年11月、京都競馬場での新馬戦にデビュー。11番人気という下馬評を覆し、見事2着に入る健闘を見せる。その後も安定した走りを見せ、3戦目で初勝利を掴む。和田竜二騎手にとってJRA通算1300勝目のメモリアルレースとなった。

続く早苗賞では、クビ差で勝利し2勝目を挙げた。そして迎えたラジオNIKKEI賞。前日の落馬事故で負傷した団野大成騎手から内田博幸騎手に乗り替わり、見事重賞初制覇。5馬身差という圧勝劇で、3連勝を達成した。内田騎手は団野騎手の健闘を称えつつ、バビットの潜在能力の高さを改めて認識した。

セントライト記念では、好スタートから先頭をキープ。追撃を1馬身半差で振り切り、重賞2勝目を飾る。しかし、菊花賞では10着、有馬記念では13着と苦杯を舐める。2021年には右前浅屈腱炎を発症し、長期休養を余儀なくされた。

エピソード

バビットの馬主である宮田直也氏は、バビットのラジオNIKKEI賞優勝当時、2頭しか所有していなかった。そのうちの一頭が、バビットである。2022年の天皇賞・秋では、報道陣にバビットの出走を記念したチロルチョコが配られたという逸話も残る。

バビットの愛称は「バ」。浜田多実雄厩舎の向かいにある田中克典厩舎の馬に好意を抱いているのでは？というSNS上の話題や、バビットの鳴き声から気になる馬がいるのではという厩舎関係者の証言など、バビットを巡る様々なエピソードが、その人気を物語っている。

結語

「恋多き男」バビット。その競走馬としての輝かしい戦績、そして牧場での幼少期から競走生活、関係者とのエピソードまで、多様な側面から見てきた。その魅力的な存在は、競馬ファンに長く記憶されるだろう。

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