バチカン図書館

バチカン図書館の概要



バチカン図書館（ラテン語名: Bibliotheca Apostolica Vaticana）は、バチカン市国に位置するローマ教皇庁の図書館です。世界最古の図書館の一つとして知られ、歴史的に重要な図書や文書を多数所蔵しています。

バチカン図書館の歴史



バチカン図書館の歴史は、学者によって以下の5つの時代に区分されています。

1. ラテラン以前: 教会の初期に遡り、ラテラン宮殿に移される以前の時代です。この時代の書物は現存数が非常に少ないです。
2. ラテラン期: ラテラン宮殿に図書や手記が保管されていた時代で、13世紀末まで続きました。
3. アヴィニョン期: 書物のコレクションが大幅に増加した時代で、教皇がアヴィニョンに滞在していた時期の記録も含まれます。1370年代に教皇権がローマに戻るまで続きました。
4. バチカン以前: 1370年頃から1447年までの期間で、図書館の一部がローマやアヴィニョンなどに散在していました。
5. バチカン期: 1448年に図書館がバチカンに移されてから現在に至るまでの期間です。

バチカン図書館の設立



1448年、教皇ニコラウス5世が、先代の教皇から受け継いだコレクションと自身の蔵書を合わせて、バチカン図書館を設立しました。この時の蔵書には、ギリシャ語、ラテン語、ヘブライ語の古写本350点が含まれていました。ニコラウス5世のコレクションには、コンスタンティノープルの帝国図書館にあった文書も含まれていたとされています。1481年には、初代館長バルトロメオ・プラティナが図書目録を作成し、蔵書数は3500点に達し、当時西洋で最も大きな図書館の一つとなりました。1587年頃には、教皇シクストゥス5世がイタリア人建築家ドメニコ・フォンターナに新館建設を依頼し、現在の図書館の基礎が築かれました。

遺贈品と購入品



バチカン図書館は、何世紀にもわたって遺贈品や購入によってコレクションを拡充してきました。

1623年には、バイエルン選帝侯マクシミリアン1世から、ハイデルベルクの領主図書館の蔵書約3500点が寄贈されました。この蔵書は、1797年に一時的にパリに送られましたが、1815年のパリ条約によってハイデルベルクに戻されました。その後、教皇ピウス7世から852点の贈呈品が1816年に制作され、領主図書館は現在もバチカン図書館に残っています。1657年にはウルビーノ公爵領の図書が購入され、1661年にはギリシャ人学者レオ・アラティウスが図書館の司書に就任しました。さらに、スウェーデン女王クリスティーナは、自身の図書館を死後バチカン図書館の一部とするよう取り計らいました。

現在の蔵書



現在のバチカン図書館は、7万5千点の文書、15世紀以前の初期刊本8500点を含む、110万点以上の蔵書を誇ります。17世紀初頭には、15万点のバチカン秘密保管文書が、バチカン秘密文書館に移されました。

バチカン図書館の最も著名な蔵書には、最古の聖書写本として知られるバチカン写本があります。また、プロコピオスの著作「秘史」も図書館内で発見され、1623年に出版されました。都市伝説として、世界最大級のポルノ書物を所蔵しているという噂がありますが、これは事実無根であり、実際には禁書目録にある複製品など、不道徳な文書はごくわずかしか所蔵していません。また、ルネサンス期の性愛を扱った芸術作品も少数所蔵していますが、それほど多くはありません。

バチカン図書館は、歴史、法律、哲学、科学、そして神学の研究図書館として機能しており、研究目的であれば誰でも利用できます。図書の個人学習用に、1801年から1990年まで写真複写が発行されていましたが、現在は電子メールや図書館への直接依頼によって利用できます。また、図書館情報大学（現在の筑波大学）がバチカン図書館と提携しています。

2014年3月には、図書館と日本のNTTデータの間で、2世紀から20世紀にかけて書かれた約8万冊の手書き文献の電子データ化契約が締結されました。電子化された文献は、2014年10月20日より順次公開されています。

盗難被害



1995年、バチカン図書館内の貴重な書物のページが、数年にわたって盗難されていたことが判明しました。犯人はオハイオ州立大学を退職した教授で、最終的に起訴され、盗まれたページは返還されました。

参考文献




外部リンク




座標



北緯41度54分17秒 東経12度27分16秒

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