バラオ級潜水艦

バラオ級潜水艦：第二次世界大戦の海の狼たち

バラオ級潜水艦は、アメリカ海軍が第二次世界大戦で運用した潜水艦の艦級です。ガトー級潜水艦をベースに改良が加えられた本級は、同時代の潜水艦の中でも高い成功を収めた設計として知られています。その高い性能と大量建造によって、太平洋戦争におけるアメリカ海軍の勝利に大きく貢献しました。

開発の経緯

1941年度に建造が始まったガトー級潜水艦は、その優れた性能から追加建造が決定しました。しかし、アメリカ海軍は敵潜水艦の対潜能力向上を予測し、より深い深度まで潜航できる潜水艦の必要性を認識していました。このニーズと、当時開発された高張力鋼の技術革新が相まって、バラオ級潜水艦の開発が開始されました。

当初は新設計による建造が予定されていましたが、ガトー級の設計を一部修正し、高張力鋼を採用することで、より迅速に戦力化できるという判断から、1942年度艦としてバラオ級の建造が決定されました。

1941年度と1942年度の予算で合計140隻以上の建造が計画されましたが、一部はガトー級やテンチ級への振り替え、建造キャンセルなども発生し、最終的に120隻が建造されました。このうち101隻が実戦に参加し、その活躍は顕著でした。特筆すべきは、1973年に台湾に売却されたタスク(SS-426)が、2017年現在も現役で運用されていることです。

船体と兵装

バラオ級とガトー級の大きな違いは、高張力鋼の採用による潜航深度の向上です。バラオ級では試験深度が120mに増加し、改良されたポンプの採用によって、さらに深い深度での運用が可能となりました。ただし、船体構造の一部の修正以外には、ガトー級との大きな差異はありません。また、艦橋は最初から凸型を採用していました。

兵装に関しても、ガトー級で途中から変更された水上兵装が、バラオ級では標準装備として最初から搭載されました。艦によって兵装に差異が見られる点や、運用期間中に兵装が強化されていく点も、ガトー級と共通しています。

建造と問題点

バラオ級は、ガトー級と同様に複数の民間および海軍の造船所で建造されました。建造数の増加に伴い、クランプ社が新たに建造に加わりましたが、同社の建造艦は工期遅延や品質問題が多く発生しました。特に、ランセットフィッシュ(SS-296)は建造から就役まで長期にわたり、就役後間もなく事故で沈没しています。クランプ社は、バラオ級およびテンチ級潜水艦の建造計画から6隻がキャンセルされました。

戦歴

バラオ級潜水艦は、ガトー級と同様に通商破壊作戦で大きな成果を上げました。日本軍の輸送船や軍艦を数多く撃沈し、日本への物資供給を阻害しました。艦隊作戦への参加や、人命救助、物資輸送、諜報活動なども行っています。

バラオ級の代表的な戦果としては、空母信濃の撃沈(アーチャーフィッシュ)、戦艦金剛の撃沈(シーライオン)、対馬丸の撃沈(ボーフィン)などが挙げられます。しかし、すべての艦が活躍できたわけではなく、終戦間際に就役した一部の艦は戦果が乏しく、終戦まで戦果を挙げられなかった艦も存在しました。9隻は戦没しています。

戦後

戦後は、多くのバラオ級潜水艦が訓練艦や標的艦として使用されました。一部の艦は他国に供与され、現在も運用されているものもあります。また、事故により沈没した艦も複数あります。他国に供与された潜水艦は、トルコ、イタリア、アルゼンチン、ブラジル、ギリシャ、スペイン、ベネズエラ、オランダ、ペルー、チリ、台湾などに渡りました。

記念艦

現在、いくつかのバラオ級潜水艦が博物館などで記念艦として保存されています。これらの艦は、太平洋戦争やその後の歴史を伝える貴重な遺産として、多くの人々にその存在を認識されています。

参考文献

本文中に記載されている文献は、バラオ級潜水艦に関する詳細な情報を提供する貴重な資料です。これらの文献を参考に、より深くバラオ級潜水艦について理解することが可能です。

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