バーベット

バーベットと露砲塔の解説

バーベット（barbette）とは、主に軍艦に搭載される砲台構造の一種で、甲板の上に突出した円筒形の装甲部を指します。この構造は、主砲や一部の副砲に使用されており、装甲艦の防御力と火力を向上させるための重要な役割を果たします。バーベットの頂部には火砲が設置されており、その内部には弾薬を揚荷するためのエレベーター状の装置が備えられています。これにより、弾薬庫から砲弾や装薬を安全に運搬することが可能となっています。

バーベットは、内部に弾薬を含むため、被弾した際の危険度が高く、戦艦の全体的な防御構造の中でも非常に重要視されています。特に、バーベット部分は舷側の垂直装甲や甲板の水平装甲と密接に関連しており、戦艦の生存能力を高める要素となっています。

露砲塔の特徴

露砲塔とは、火砲の基部がバーベットから露出している形状を指し、水平方向からの攻撃を受けた場合、基部のみが装甲で保護される仕組みです。この形状は、19世紀後期の装甲艦に見られ、当時の火砲は水平方向での照準射撃が主流であったため、完全な砲塔ではなく、基部の防御だけが重視されていました。

当時の艦砲は、直接照準で射撃されることが一般的であったため、防御は主に水平方向からの脅威に対するものでした。露砲塔の上部は開放的であり、吹き晒しにされているか、スプリンター（命中弾の断片）に対して最低限の防御が可能な屋根（フード）が設けられていました。しかし、この防御は次第に不十分となり、砲の射程が延びるにつれて砲弾の落下角度が急激に変化し、上部の防御が必要不可欠となりました。

こうして、本格的な砲塔設計への移行が進む中でも、対空砲や両用砲など一部の兵装においては、露砲塔が長期間使用され続けました。露砲塔を主兵装とする軍艦は「バーベット艦」または「露砲塔艦」と呼ばれ、フランス海軍の装甲艦「ル・ルドゥタブル」や、イギリス海軍の前弩級[[戦艦]]「ロイヤル・サブリン級」などがこの特徴を持っています。さらに、清国海軍の「定遠型」やイタリア海軍の「デュイリオ級」ではフード付きの露砲塔が採用されていました。

類似した構造に隠顕式砲塔があります。これは、装填中はバーベット内部に砲が隠れ、射撃時にのみ砲を持ち上げる形式で、露砲塔とは異なる概念です。しかし、このスタイルは重量がかさむため、軍艦ではあまり使用されず、主に要塞用の砲架に見られます。

バーベットや露砲塔は、歴史的な軍艦の設計において重要な要素であり、戦艦の防御力と攻撃力に多大な影響を与えました。

もう一度検索