パステル

パステルの概要

パステルは、炭酸カルシウムをベースに着色顔料や接着剤を加えて形成された棒状の画材です。フランス語の「練り固める」という言葉に由来し、その名の通り、さまざまな表現が可能な特性を持っています。特に、顔料そのものの色合いや風合いが美しく、手や布、擦筆を使用してぼかし効果を出すことができるため、柔らかい印象の絵を描くのに適しています。しかし、パレットでの混色が難しいため、多くのメーカーから多様な色が販売されています。

特徴

パステルを使用する際には、選ぶ紙の質が大変重要です。安定した硬さと粗さが求められ、顔料が崩れることによって色が付着するため、使用する用具も工夫が必要です。また、固着力が弱いため、作品が完成した後は専用の定着液を使用することで、色粉を固定します。

パステルを用いた作品は「パステル画」として知られ、多彩な表現方法が求められる技術の一つです。

種類

パステルにはいくつかのバリエーションがあります。

ソフトパステル

このタイプは、顔料に少量の粘着剤が加えられており、非常に柔らかい質感で描くことが可能です。特に豊かな色合いを求める場合に適しています。

ハードパステル

顔料にやや多めの粘着剤が混ぜられ、チョークに似た硬さで形成されています。一般的には四角いスティック状で、フランスの有名なブランド「キャレ・コンテ」が代表例です。

パステル鉛筆

木製の鉛筆に硬めのパステルを芯に使用したもので、持ち運びが容易であり、精密な作業に向いています。しかし、大きな面を描くには適していません。

オイルパステル

オイルパステルは、顔料に油性のワックスが混ぜられたパステルです。1925年に日本で開発され、クレパスが有名な例です。デッサンやスケッチに適しており、その安価さから多くの芸術家に愛されています。

パステルの材料

パステルスティックは、多様な色を出すために以下の材料を使用して製造されています。

- 顔料: 鉱物性、有機性、植物性のものが使用されます。
- 充填剤: チョークや石膏が使用され、テクスチャーを与える役割を果たします。
- 接着剤: スティックの一貫性を確保し、硬さを調整します。

歴史

パステルの使用は15世紀に始まり、1499年にはレオナルド・ダ・ヴィンチが学んだことでも知られています。17世紀から18世紀にかけて、多くの画家がこの技法を用いるようになり、特に肖像画においてその美しさが引き立てられました。名だたるアーティストがこの画材を用いて、パステル画の発展に寄与しました。

19世紀後半には印象派や象徴主義の芸術家によって新たな形で使用され、20世紀初頭まで多くの影響を与えました。後の世代においても、パステルは大切な画材として再評価され続けています。

使用する道具

パステル画を描くためには、以下の道具が必要になります。

- キャンバスやイーゼル
- 擦筆やティッシュペーパー（ぼかし用）
- 消しゴムやカッターナイフ（修正用）
- 定着剤（フィキサチーフ）など

安全上の注意

パステルを使用する際は、粉塵が発生しやすく、呼吸器系に影響を及ぼす恐れがあります。特に有毒顔料が使用されている場合が多いため、注意が必要です。現代のパステルでは、こうした顔料が代替品に置き換えられ、多くのアーティストが安全に使用できるよう工夫が進められています。

パステルは伝統的な画材でありながら、今なお新たな表現の可能性を秘めています。

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