ビショップ

チェスの駒：ビショップ

ビショップは、チェスの8種類の駒の1つです。その名称は英語で「僧正」を意味し、駒の形が司教の冠に似ていることが由来とされています。しかし、ビショップのルーツを辿ると、その歴史は意外な事実を明らかにします。

名称と歴史

ビショップの起源は、古代インドのゲームにまで遡ります。サンスクリット語では「ハスティン」、ペルシア語では「ピール」と呼ばれ、いずれもゾウを意味していました。その後、アラビア語を経てヨーロッパに伝来する過程で、名称は変化していきました。スペイン語の「alfil」はアラビア語からの借用語であり、ロシア語の「слон（スローン）」もゾウを意味する言葉です。中国の将棋であるシャンチーでも「象」と呼ばれています。興味深いことに、現在のヒンディー語ではビショップを「ラクダ」と呼び、ゾウはルークを表しています。

ヨーロッパでは、言語ごとにさまざまな名称が用いられてきました。ドイツ語では「Läufer（走者）」、イタリア語では「alfiere（副官）」、フランス語では「fou（道化）」など、それぞれの文化がビショップの性質を反映した呼称を与えてきました。

インドにおけるビショップの動きは、現在のものとは異なっていました。斜めに2歩ずつ動く、縦横に2歩ずつ動く、斜めまたは前に1歩ずつ動くなど、いくつかのバリエーションが存在したようです。現在のビショップの動きは、15世紀末の文献に初めて登場します。クイーンと並んで、西洋で大きく動きの変更された駒の一つと言えるでしょう。

初期配置と表記

チェスの開始時には、白のビショップはc1とf1、黒のビショップはc8とf8に配置されます。棋譜では、ビショップは「B」で表記されます。白と黒のビショップはそれぞれ、白マスと黒マスからしか移動できないため、ゲームを通して同じ色のマスにしか存在しません。

駒の動き

ビショップは、斜め方向に何マスでも移動できます。白マスのビショップは白マスのみ、黒マスのビショップは黒マスのみを移動します。これは、ビショップが一度に複数のマスを移動できる反面、チェス盤の半分しか移動できないことを意味します。移動中に他の駒を飛び越えることはできません。敵の駒があるマスに移動することで、その駒を取ることができます。味方の駒があるマスには移動できません。

ビショップの価値

ビショップは「小駒」と呼ばれ、他の駒と比較して価値は低く評価される傾向があります。しかし、これはあくまで平均的な評価であり、実際のゲームでは局面によって価値は大きく変動します。特に、2個のビショップを持つことは、単純に価値を合計するよりも大きなアドバンテージとなります。

ビショップの特色と用語

ビショップの大きな特徴は、常に同じ色のマスに留まることです。ポーンのアンダープロモーションで新たなビショップが生み出されない限り、同じ色のマスに複数のビショップが存在することはありません。このため、「2個のビショップ」というよりも「白マスビショップと黒マスビショップ」という捉え方が正確です。

ビショップに関する特有の用語として、「グッド・ビショップ」と「バッド・ビショップ」があります。

グッド・ビショップ: 自分と同じ色の味方のポーンに邪魔されず、広い範囲を自由に移動できるビショップ。
バッド・ビショップ: 自分と同じ色の味方のポーンに邪魔され、行動範囲が制限されているビショップ。

グッド・ビショップとバッド・ビショップの区別は、ゲームの戦略を考える上で非常に重要です。

関連項目

チェス用語一覧
角行（将棋）：ビショップと動きが同じで、英語でもBishopと訳される。
銀将（将棋）：動きは異なるが、起源の上ではビショップに対応する。
アルフィル：ビショップの元になった駒

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