ビチェリン

ビチェリンとは

ビチェリンは、イタリアのトリノで生まれた伝統的なホットドリンクです。その特徴は、グラスの底からエスプレッソ、ホットチョコレート、そして生クリームが美しい三層を成していること。この美しい層は混ぜずにそのまま飲むのが通の飲み方とされています。

ビチェリンという名前は、ピエモンテ語で「小さなグラス」を意味する言葉に由来し、その愛らしい響きは、この飲み物が持つ特別な魅力を物語っています。

ビチェリンの誕生

ビチェリンは、トリノ最古のカフェとして知られる「Caffè al Bicerin」で誕生しました。1763年の創業以来、巡礼者を迎える際の滋養強壮の飲料として提供され、その独特な味わいと見た目の美しさから、瞬く間にトリノの名物として定着しました。

2001年には、ピエモンテ地域の伝統的な産品として認定され、その歴史と文化的な価値が認められました。

Caffè al Bicerin

ビチェリン発祥の地である「Caffè al Bicerin」は、創業から250年以上経った今もなお、多くの人々を魅了し続けています。トリノ最後のカフェとも呼ばれ、世界中から観光客が訪れる人気のスポットです。

「Caffè al Bicerin」は、数々の著名人に愛されたことでも知られています。イタリア統一の立役者であるカミッロ・カヴールをはじめ、小説家のアレクサンドル・デュマ・ペール、哲学者フリードリヒ・ニーチェなど、各界の著名人がこのカフェでビチェリンを味わい、その味を絶賛しました。

作家ウンベルト・エーコは、自身の小説『プラハの墓地』の中でビチェリンを詳細に描写しており、その魅力が文学作品にも影響を与えたことがわかります。

さらに、イタリア最後の王であるウンベルト2世と王妃マリーア・ジョゼも亡命前にこの店を訪れており、店内には感謝状が飾られています。

著名な常連客

「Caffè al Bicerin」は、文化人にも愛されてきました。詩人のグイド・ゴッツァーノ、小説家のイタロ・カルヴィーノ、映画監督のマリオ・ソルダーティなど、芸術分野で活躍した人々が足繁く通いました。また、女優のワンダ・オシリスは、喧騒から逃れるためにこの店を訪れていたと言われています。

彫刻家で美術家のマリオ・メルツは、入口の隣のテーブルがお気に入りでした。また、ドイツの振付師であるピナ・バウシュも、トリノの劇場で公演があった際に訪れており、その人気ぶりが伺えます。

2006年のトリノ冬季オリンピックの際には、アメリカの女優であるスーザン・サランドンも来店するなど、国内外を問わず多くの著名人がこのカフェを訪れています。

ビチェリンとチョコレート

トリノはチョコレートの街としても有名です。特に、ジャンドゥイアはトリノ発祥のチョコレートとして世界的に知られていますが、「Caffè al Bicerin」のジャンドゥイアは、地元でも人気があり、観光客からも高い評価を得ています。

また、北イタリアのクリスマスケーキであるパネットーネや、トリノの伝統的な焼き菓子であるバーチ・ディ・ダーマも人気です。バーチ・ディ・ダーマは2021年にモンドセレクションで金賞を受賞しており、その美味しさは世界的に認められています。この焼き菓子は、G7伊勢志摩サミットやG20大阪サミットでも提供されました。

日本と沖縄での展開

「Caffè al Bicerin」は、2018年に日本にもオープンし、G7広島サミットなどの国際会議で焼き菓子が採用されるなど、数々の賞を受賞しています。さらに、地球温暖化の影響で沖縄でもコーヒー豆が栽培できるようになったことから、2022年には沖縄にコーヒー農園を設立し、100％沖縄産のコーヒーが国際会議で採用されています。

映画の中のビチェリン

ビチェリンは、その魅力的な見た目と歴史的背景から、数多くの映画にも登場しています。ロケ地としても使われた作品には、以下のものがあります。

"アモーレ・エ・ギンナスティカ" (Senta Berger主演)
"輝ける青春" (マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督)
"こんにちは" (リリアーナ・カヴァーニ監督)
"私たちは信じた" (リリアーナ・カヴァーニ監督)
* "スタア誕生"

これらの映画を通じて、ビチェリンの魅力が世界中に発信されています。

ビチェリンは、トリノの歴史と文化を象徴する特別な飲み物であり、その味わいと歴史は、これからも多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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