ピクシー

ピクシー（Pixie）は、イングランド南西部のコーンウォール地方などに伝わる妖精の一種で、ピグシーやピスキーとも呼ばれます。彼らは普段は透明で人間の目には見えませんが、頭に四つ葉のクローバーを乗せることで、その姿を現すとされています。

その外見は、身長20cmほどの小人で、赤い髪、上に反った鼻が特徴です。また、暗闇でも光る目、青白い顔、尖った耳を持ち、緑色の服を着て、先の尖ったナイトキャップを被っているとも伝えられています。

ピクシーは、貧しい人々のために仕事を手伝うことがあり、そのお礼として、ボウル一杯のクリームやリンゴ一個をご馳走になることがあります。しかし、怠け者を見つけると、つねったりポルターガイスト現象を起こして懲らしめるなど、いたずら好きな一面も持っています。

彼らは、一晩中輪を描いて馬を乗り回し、ガリトラップと呼ばれる妖精の輪を作るとも言われています。翌朝には、馬のたてがみと尾を結んで馬を帰すという奇妙な行動も見られます。

ピクシーは、古代の塚やストーンサークル、洞窟などに住み、夜になると森の中でダンスをするとされています。彼らの踊りに出くわした旅人は、皆一緒に踊らされ、時間の観念を失ってしまうと言われています。この踊りに巻き込まれないための妖精よけの方法として、上着を裏返しに着ることが有効だと伝えられています。また、彼らは旅人を惑わせ、迷わせ、疲れさせるいたずらも好んで行います。

さらに、ピクシーは人間の子供を盗んだり、取り替え子（チェンジリング）を行うという伝承もあります。そのため、ヴィクトリア朝時代まで、子供がさらわれないように、赤ん坊をベビーベッドに縛り付ける風習があった地域もあるほどです。

ピクシーは、洗礼を受けずに死んだ子供の魂が化身した存在だとも言われています。そのため、直接人目につく場所には出て来ませんが、人間と様々な点で共生関係にある存在であるとされています。彼らは、自分に恵みを与えた者には正しく報いる一方、基本的には人間に悪戯をすることが好きです。

ピクシーという名前の語源は、悪戯好きな妖精のパック（Puck）に愛称語尾の「sy」がついた「パクシー」から来ているとされています。

ピクシーは、イギリス南西部の民間伝承において、身近な存在として語り継がれ、そのユニークな特徴と行動は、今も多くの人々に親しまれています。

参考文献

草野巧『幻想動物事典』新紀元社、1997年 ISBN 4-88317-283-X
キャロル・ローズ『世界の妖精妖怪事典』原書房、2003年 ISBN 978-4562037124

関連項目

小人 (伝説の生物)
伝説の生物一覧

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