ファルコン9

ファルコン9（Falcon 9）の概要

ファルコン9は、アメリカの民間企業スペースXによって開発された2段式商業用打ち上げロケットです。低周回軌道における打ち上げ能力は22,800 kgを誇り、コスト効率の良さが評価されています。2010年6月4日に初めて打ち上げに成功し、その後も様々な改良が加えられています。

低コスト化と商業シェア

ファルコン9は、打ち上げ価格が2022年時点でおよそ6,700万ドル（約90億円）と、同時代のロケットの中では非常に手頃です。このコスト削減により、商業衛星市場での大きなシェアを獲得しています。例えば、デルタIVやアトラスV、アリアン5、H-IIAなど、同規模のロケットは1億ドルを越える場合が多く、ファルコン9の価格は際立って安価です。名前の由来は映画『スター・ウォーズ』のミレニアム・ファルコン号に由来しており、ロケット名の数字はエンジンの数を示します。

設計と構造

ファルコン9は大型貨物や有人宇宙船の打ち上げを前提に設計されており、アメリカ航空宇宙局（NASA）との契約を通じて国際宇宙ステーション（ISS）への補給も行われています。液体酸素とRP-1を推進剤として使用する2段式ロケットで、第1段はマーリンエンジンを9基使用し、総推力は約5.0 MNです。

第2段には真空運転用に改良されたマーリンバキュームエンジンが搭載されており、複雑な再点火システムを構築しています。タンクの製造にはアルミニウム-リチウム合金が使われ、最高水準の溶接技術で設計されています。これらの技術により、大幅な製造コストの削減が実現されています。

バージョンの進化

ファルコン9は、初打ち上げ以降も改良が続けられています。最初のv1.0から始まり、v1.1、フル・スラスト、ブロック4、ブロック5と進化を遂げました。v1.1以降はエンジンの改良や構造の変更が行われ、特にフル・スラストでは打ち上げ能力が33%向上し、着陸脚の強化もなされました。ブロック5では推力と再利用性能を最大化する改良が行われており、点検だけで10回の再使用が可能です。

信頼性と打ち上げ成績

ファルコン9は高い信頼性を持つことで知られています。2021年9月時点で、127回中129回の打ち上げに成功しており、成功率は98.45%に達しています。失敗事例は2015年及び2016年の2件だけで、サターンVロケット以来、飛行中にエンジンが停止してもミッションを継続できる能力を持つ唯一のロケットです。シンプルな設計によって信頼性を高め、打ち上げの安全性を確保しています。

再利用の概念

ファルコン9は、スペースシャトル以降で初めて再利用可能なロケットとして設計され、打ち上げの1段目を回収・再利用することが可能です。1999年に初成功し、現在では打ち上げの半数以上が再利用されたロケットが用いられています。コスト削減の観点からも、再利用は大きなメリットを生んでいます。

打ち上げ記録の更新

2023年には、ファルコン9が91回もの打ち上げを行い、全てのミッションを成功させていることが報告されています。さらに、打ち上げに際するリアルタイム配信が行われ、多くの注目を集めることでも知られています。ファルコン9の技術と実績は、今後の宇宙産業においても重要な基盤となることでしょう。

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