ブルレスケ

ブルレスケ

ブルレスケ（ドイツ語: Burleske）は、クラシック音楽における楽曲の形式または性格を示す名称の一つです。その語源は英語の「バーレスク（burlesque）」に由来し、本来はユーモアと辛辣さを兼ね備えた、どこか剽軽で諧謔的な趣を持つ楽曲を指します。

概要

この名称は、特定の楽曲全体ではなく、交響曲や協奏曲などの一部の楽章に用いられることが少なくありません。例えば、エドヴァルド・マクダウェルやマックス・レーガーのピアノ曲、グスタフ・マーラーの交響曲第9番、ドミートリイ・ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番といった作品において、ブルレスケ楽章が見られます。これらの楽章は、しばしば急速なテンポで、軽妙ながらも時に皮肉めいた雰囲気を帯びた音楽が展開されます。

しかし、ブルレスケという名称が単独の作品名として冠されたものの中で、特に広く知られているのは、リヒャルト・シュトラウスが作曲した《ブルレスケ ニ短調》です。

リヒャルト・シュトラウス：ブルレスケ ニ短調

リヒャルト・シュトラウスは、まだ若き日の1886年に、ピアノと管弦楽のためにこの《ブルレスケ》を作曲しました。作品からは、同時代の大家であるヨハネス・ブラームスの影響が随所に感じられます。当初、この作品は《ピアノと管弦楽のためのスケルツォ》という題名で、著名な指揮者ハンス・フォン・ビューローに献呈されました。しかし、ビューローはこの曲の極めて高い演奏難易度を理由に、自身での演奏を断念したと伝えられています。

初演は、作曲から数年を経た1890年6月21日、アイゼナハで開催された音楽祭にて行われました。指揮は作曲者自身が務め、ピアノ独奏はフランツ・リストの高弟であったオイゲン・ダルベールが担当しました。

この作品は、自由なソナタ形式に基づいて構成された単一楽章の楽曲ですが、その演奏時間はおよそ20分に及びます。音楽的な特徴としては、特に後半部分に置かれたカデンツァが挙げられます。このカデンツァは、セルゲイ・ラフマニノフを彷彿とさせるかのような、目を奪われるほどに技巧的で演奏至難なパッセージが連続します。

また、この曲はピアノだけでなく、ティンパニが重要な役割を担うことでも知られています。冒頭から終結部まで、ティンパニはピアノやオーケストラと積極的に掛け合いを展開し、楽曲に推進力と色彩を与えています。曲は、まずティンパニとオーケストラによる対話のような序奏で始まります。その後、ピアノが挑戦するかのように、華やかで力強い登場を果たします。ピアノパートには、派手な分散オクターブによる下降や、華麗なアルペジオなど、高度な技巧が惜しみなく盛り込まれています。終盤は、ピアノの華麗な上昇音型が静かに消えていくように幕を閉じますが、全体を通して聴衆にはその荒々しく情熱的な印象が強く残る作品と言えるでしょう。

この《ブルレスケ》は、その音楽的な魅力と演奏上の挑戦から、多くの著名なピアニストによって取り上げられてきました。グレン・グールド、ルドルフ・ゼルキン、クラウディオ・アラウ、マルタ・アルゲリッチといった、世界的に有名な演奏家たちがこの作品の録音を残しています。

関連事項

ユーモレスク：同様に性格的な小品に用いられることのある楽種。

外部リンク

ブルレスケの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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