プロセルピナ

プロセルピナ：春の女神にして冥府の女王

ローマ神話において、プロセルピナは春の訪れを告げる女神として、また冥府を司る女王として重要な役割を担っていました。その存在は、ギリシア[[神話]]のペルセポネーに対応しており、両者の物語には多くの共通点が見られます。

プロセルピナは、最高神ユーピテルと豊穣の女神ケレースの娘として生まれました。しかし、彼女の運命は、冥府の王プルートーとの出会いで大きく変わることになります。プルートーは、プロセルピナの美しさに魅せられ、彼女を冥府へと誘拐しました。

ケレースは娘の失踪を知り、深く悲しみに暮れました。娘を取り戻すため、ケレースは冥府へと赴き、プルートーとの激しい交渉の末、プロセルピナを地上へと連れ戻すことに成功したかに見えました。しかし、冥府でプロセルピナはザクロの実を食べてしまっていたのです。

神々の定めによって、冥府の食べ物を口にした者は冥府に属することになります。このため、プロセルピナは1年のうち半分を冥府で、残りの半分を地上で過ごすことになりました。プロセルピナが地上に戻る季節、大地は潤いを取り戻し、春が訪れます。このことから、プロセルピナは春の到来をもたらす女神として崇められるようになったのです。

プロセルピナの起源については諸説ありますが、もともとローマに存在した農業の女神であった可能性や、ギリシア[[神話]]の導入に伴ってローマに取り入れられた神である可能性も指摘されています。ローマにおいては、豊穣と春の到来をもたらす農耕の女神としての役割が強調され、人々の信仰を集めました。

興味深いことに、プロセルピナはリーベラという女神と同一視されることもありました。リーベラもまた、豊穣や自由を司る女神であり、両者の結びつきは、自然の恵みと豊かさへの人々の願いを反映していると言えるでしょう。

プロセルピナの物語は、単なる神話の逸話ではありません。春と秋の移ろい、生と死の循環、そして豊穣と枯渇といった自然の営みを象徴的に表現しています。彼女の存在は、古代ローマの人々の自然観や信仰、そして生死に対する考え方を理解する上で重要な手がかりとなります。

参考文献

オウィディウス『変身物語 上・下』中村善也訳、岩波文庫（1981・1984年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

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