プロトサイエンス

プロトサイエンス（protoscience）

プロトサイエンスとは、科学哲学の領域で使用される用語であり、科学的なプロセスを経て研究が進められている、科学として確立する以前の新しい分野を指します。この用語は、まだ日本語として定着しているとは言えず、使用される場合でも、その意味は文脈によって変動することがあります。

意味と解釈

プロトサイエンスという用語を使う人は、科学と疑似科学の区別は、立場によって異なると主張します。彼らにとってプロトサイエンスは、確立された科学と疑似科学の中間的な位置を占め、科学的な方法論に基づいた探求が行われている状態を意味します。

プロトサイエンスの立場からは、「未科学」は科学的にまだ解明されていない全ての現象を指すものと解釈されます。しかし、プロトサイエンスは、単なる未科学とは異なり、疑似科学とも一線を画す、より形式的な探求を意味します。

羽間鋭雄は、現象が科学的に立証できないのは、科学が未熟であるためだと指摘し、未科学と非科学を混同してはならないと主張しています。池谷元伺は、未科学現象が未解明のまま残るのは、科学者が専門分野外の疑問に答えないことが原因であると述べています。一方、松本紘は、「非科学」を科学の領域外にある未発達な分野と捉え、「未科学」と言い換えることができると主張しています。

プロトサイエンスとして扱われる例

プロトサイエンスとして扱われるものには、以下のような例があります。

外丹：中国伝統の錬金術
STAP細胞：小保方晴子氏が発表した万能細胞
常温核融合：室温での核融合反応
アーユルヴェーダ：インドの伝統医学

未科学として扱われる例

未科学として扱われるものには、以下のような例があります。

東洋医学：鍼灸や漢方など
宏観異常現象：地震の前兆現象とされるもの
サイエンス・フィクション：科学的な要素を取り入れたフィクション作品
心の健康：精神的な健康状態

プロトサイエンスは、科学のフロンティアを開拓する可能性を秘めた分野であり、今後の発展が期待されています。しかし、その探求は慎重に進められ、疑似科学との境界線を明確に保つ必要があります。

参考文献

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松本紘「人と科学と未科学」『東アジア・サマースクールジャーナル』第6号、奈良県立大学、2018年、31頁
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