ベリト

ベリト（Berith）

ベリトは、ヨーロッパの伝承や悪魔学において知られる悪魔の一人です。別名としてベアル（Beal）、ボフリ（Bofry）、ボルフリ（Bolfri、Bolfry）とも呼ばれます。

由来

ベリトの起源は、旧約聖書に登場するシケム（現在のナーブルス）の人々が崇拝した神バアル・ベリト（Baal Berith）に遡ると考えられています。このバアル・ベリト神に由来するとされる悪魔バルベリト（Balberith）とは、同一視されることもあれば、別名として扱われることもあります。

特徴

容姿

イギリスで発見された魔術書『ゴエティア』や、ネーデルラントの医師・文筆家ヨハン・ヴァイヤーの著書『悪魔の偽王国』によると、ベリトは赤い衣服と王冠を身につけ、赤い馬に乗った兵士の姿で現れるとされています。この姿は、彼の軍事的、支配的な側面を象徴していると考えられます。

地位と権能

『ゴエティア』では、ベリトは26の軍団を率いる地獄の公爵であり、序列は28番目とされています。『悪魔の偽王国』にも同様の記述があります。ベリトは召喚者の求めに応じて、過去、現在、未来についての質問に真摯に答える力を持つとされています。また、金属を黄金に変える力や、人を尊厳ある姿に変える力も持っています。しかし、ベリトはしばしば嘘をつくため、その言葉を鵜呑みにすることは危険とされています。召喚する際には、指輪を用意し、同じく『ゴエティア』に記されている悪魔ベレトと同様の態度で相対する必要があるとされています。

バルベリト（Balberith）

セバスチャン・ミカエリスによれば、バルベリトは第一階級の悪魔であり、殺人と冒涜を司るとされています。また、聖バルナバの敵対者であるとも言われています。堕天する前は智天使の君主であったという説もあります。コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』では、バルベリトは皇帝ベルゼビュートの王族であり、諸同盟の指導者とされています。ヴァイヤーは、バルベリトを地獄の記録保管所の看守であるとしています。

1634年のルーダンの憑依事件では、男根に似た悪魔バアルベリトが作成し署名した悪魔との契約書が証拠として提出されました。これにより、ユルバン・グランディエ神父が悪魔と契約を結んだと主張されました。この事件は、当時における悪魔学や魔女狩りの社会的影響を示唆する重要な例です。

結論

ベリトは、悪魔学において重要な位置を占める悪魔であり、その複雑な性格や多様な伝承は、中世から近世にかけての信仰や社会観を反映しています。バルベリトとの関連性も含め、ベリトの研究は、悪魔学だけでなく、歴史や文化の研究においても興味深い視点を提供してくれるでしょう。

参考文献

グスタフ・ディヴィッドスン『天使辞典』吉永進一訳、創元社、2004年。
フレッド・ゲティングズ 著、大瀧啓裕 訳『悪魔の事典』青土社、1992年。
コラン・ド・プランシー『地獄の辞典』床鍋剛彦訳、講談社、1990年。
Mathers, S.L.MacGregor, and Crowley, Aleister, The Lesser Key of Solomon(1904), The Internet Sacred Text Archive 内の文書（英文）
Weyer, Johann, Pseudomonarchia Daemonum, Twilit Grotto: Archives of Western Esoterica 内の文書（ジョゼフ・H・ピーターソン編集・解題・注釈、ラテン語原文、レジナルド・スコットの英訳）
Waite, A.E., The Book of Ceremonial Magic(1913), The Internet Sacred Text Archive 内の文書（英文）
* Goetia, Twilit Grotto: Archives of Western Esoterica 内の文書（ジョゼフ・H・ピーターソン編集、英文）

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