ボールパーソン

ボールパーソンとは

ボールパーソンとは、野球、サッカー、テニスなどの球技において、試合で使用するボールの管理や選手への供給を主な業務とする補助的な人員のことです。試合のスムーズな進行を支える上で欠かせない存在であり、その業務内容は種目によって異なります。

様々な呼称

ボールパーソンの呼称は、その歴史の中で様々な変遷を遂げてきました。初期には、ボールを拾う役割を少年が担うことが多かったため、「ボールボーイ」という呼称が使われていました。その後、少女もこの業務に従事するようになり、「ボールガール」という呼称も用いられるようになりました。さらに、少年少女が混合で業務を行うケースが増えたことから、「ボールキッズ」という呼称も登場しました。

近年では、ポリティカル・コレクトネスの観点から、「ボールパーソン」の他に、「ボーラー (baller)」や「ボールアテンダント (ball attendant)」といった呼称も用いられるようになっています。特に「ボールパーソン」という用語は、国際テニス連盟の規則や全米テニス協会の教本、Jリーグの試合実施要項などの公式文書でも使用されています。しかし、これらの新しい用語は、現時点では主要な英語辞典には掲載されていません。これらの様々な呼称は、現在でも混在して用いられています。

また、日本プロ野球では、過去に試合を盛り上げるために犬などの動物がボールを運ぶ役割を担うこともありました。例として、広島市民球場の「ミッキー」や千葉マリンスタジアムの「エルフ」といった犬が活躍しました。さらに、漫画『ピーナッツ』では、ウッドストックが「ボールバード」として登場する話もあります。

従事者

ボールパーソンの業務は、性別や年齢を問わず、幅広い人々が従事しています。しかし、当該種目に対する十分な理解や試合の状況を把握していない場合、適切なボールの受け渡しなどの管理業務に支障が生じる可能性があります。そのため、一般的には当該種目の経験者が望ましいとされています。

ボールパーソンの業務は、試合のフィールドに近い場所で行われるため、試合の状況を間近で見ることができます。これは当該種目の愛好家にとっては非常に魅力的な環境であり、特にプロ選手の試合は、若い世代にとって良い教材となるでしょう。このような観点から、若年層の選手をボールパーソンとして採用するケースもあります。

種目ごとの業務

野球

野球では、ボールがフィールド外や観客席に出てしまうことが頻繁にあります。また、土のついたボールは交換が必要となるため、ボールの補充が頻繁に行われます。野球におけるボールパーソンは、ボールの回収に加え、球審へのボールの補充も担当します。球審は常に複数のボールを所持しており（通常は腰の袋に3個程度）、ボールパーソンはこれを補助します。

また、打者が走塁のために投げ捨てたバットの回収もボールパーソンの業務に含まれることがあります。この役割を専門とする場合は、「バットボーイ」と呼ばれることもあります。

アメリカのOfficial Baseball Rulesや日本の公認[[野球規則]]にはボールパーソンの定義は明記されていませんが、規則3.15にある「競技場内に入ることを公認された人」に含まれると考えられています。各種大会の実施要項では、ボールボーイを置くことが定められており、選手や審判と並んでグラウンド内に入れる要員として挙げられています。

野球におけるボールパーソンは、一般にファウルグラウンド内に配置され、両チームのベンチ脇に座って待機することが多いです。野球では、ファウルグラウンドに出たボールでもインプレーとなるケースがあるため、ボールパーソンがボールに接触する可能性もあります。ボールパーソンが避けようとしたにも関わらずボールが当たった場合はインプレーとなりますが、ボールパーソンがボールに触れた場合は、故意か過失かに関わらずボールデッドとなります。

サッカー

サッカーのルールにはボールパーソンの定義はありませんが、各種大会の実施要項などで配置が定められています。例えば、日本のJリーグ試合実施要項では、係員として「ボールボーイ」を置くことが規定されています。

ボールパーソンは通常、フィールドを囲むように配置されます。主な業務は、フィールド外に出たサッカーボールの回収と、選手へのボールの供給です。1990年代の競技規則改正までは、1試合に1つのボールを使うことが原則であり、交換にはレフェリーの承認が必要だったため、ボールパーソンはボールを回収した上で、スローインやゴールキックを行う選手にボールを渡していました。

1990年代の競技規則改正により、複数の予備ボールを準備することが認められるようになりました。現在では、フィールド外に出たボールをボールパーソンが回収し、同時に予備ボールを持ったボールパーソンが選手にボールを供給します。回収されたボールは、予備ボールとして所定の場所に戻され、ボールパーソンによって保持されます。

フィールド内にあるボールは、原則として選手が回収する必要があります。ただし、複数のボールがフィールド内に入ってしまうことがあり、レフェリーの指示に従ってボールパーソンがこれを回収することもあります。

日本のJリーグでは、ホームチームの下部組織の選手や地元のサッカー部員がボールパーソンを担当することが多く、ホームチームが勝っている場合にはボールの供給を遅らせたり、負けている場合には早く供給したりするといった行為が見られることがあります。これにより、アウェイチームの選手が苛立ち、ボールパーソンの少年に詰め寄るトラブルが発生することもあります。

テニス

テニスにおけるボールパーソンの歴史は古く、貴族の娯楽であった時代に、貴婦人が自分でボールを拾いに行くのが困難であったため、少年にボールを拾わせたことが始まりという説もあります。現代でも、国際テニス連盟のルールにボールパーソンという文言が明記されており、試合進行上の要員として認識されています。特に大きな大会では、ボールパーソンは公募され、長期にわたる事前講習を受けるなど、厳格な運用が行われています。

テニスにおけるボールパーソンは、フィールド外に出たボールに加え、ネットに接触したボールも回収します。ネットの両端に配置されたボールパーソンは、プレーの中断とともにボールを回収し、反対側まで駆け抜けます。その他のボールパーソンはコートを囲むように配置され、直立不動の姿勢で待機し、選手にボールを供給する際は事前に手を高く掲げるなど、特徴的な所作が見られます。

プロの試合では、ボールの他に、選手の汗を拭くタオルを渡す役割も担いますが、選手との距離が近いため、威嚇的、攻撃的な振る舞いを受けることもあります。

その他

ラグビーやラクロスなどでも、ボールパーソンが配置されることがあります。バレー[[ボール]]の国際大会などでは、ロスタイム削減のため、3つのボールを順繰りに使用するマルチボールシステムを採用しており、「ボール・リトリバー」と呼ばれる係員がボールを選手に渡す役割を担っています。また、バスケット[[ボール]]やフットサルなどの室内競技では、コート面が汗で濡れた際にモップをかける業務が含まれることがあります。卓球では一時的にボールパーソンの導入が試みられましたが、効果が低いなどの理由により、本格的な導入は見送られました。

脚注

マルチボールシステム
呼出
* エスコートキッズ

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