ポンパドウル

ポンパドウル (POMPADOUR)

ポンパドウルは、神奈川県横浜市に本社を置くベーカリーチェーンです。首都圏を中心に店舗展開しており、多摩川を境に株式会社横浜ポンパドウルと株式会社東京ポンパドウルがそれぞれ運営しています。かつては北海道にも出店していました。

店名は、フランス王ルイ15世の愛妾であったポンパドゥール夫人に由来します。

概要

創業と発展

1947年（昭和22年）8月22日、三藤喜一氏が川崎市で「昭和堂」として製パン業を創業したのが始まりです。創業当初は、三藤喜一氏と妻のヤス子氏の二人で経営していました。

1950年（昭和25年）2月には「株式会社昭和堂」を設立し、法人化しました。1963年（昭和38年）11月には川崎市に機械化パン工場を開設、1965年（昭和40年）8月には茅ケ崎工場を開設し、事業を拡大しました。

昭和堂は、創業から10年ほどの間、山崎製パンや第一屋製パンなどの大手製パンメーカーと肩を並べる有力企業として成長し、フジパンとの合併直前には年間売上高約45億円、従業員約1,000人を抱えるまでに発展しました。

インストアベーカリーへの転換

3番目の量産工場を狭山市に建設する計画が進められていましたが、従業員の確保が難しく、また、高度経済成長期の大量生産競争において大手製パンメーカーとの資金力の差が大きくなってきたことから、事業の方向転換を模索することになりました。

そこで、アメリカのインストアベーカリーを視察し、焼きたてパンの美味しさを再認識。鮮度の高いインストアベーカリー事業への参入を決意しました。

1969年（昭和44年）11月、高級ファッションの街であった横浜市中区元町に「ポンパドウル」1号店をオープンしました。高級パンのイメージを出すために、店舗はエリゼ宮殿を模したデザインとし、ターゲット層である若い女性客のために、1階に豪華なトイレを設置するなど工夫を凝らしました。

当時、日本ではまだ馴染みの薄かったハード系のフランスパンを主力商品とし、1日に8回焼き上げ、最も美味しいとされる2時間以内に提供することにこだわりました。また、菓子パンも1日に3回以上焼き上げ、あんパンやジャムパンではなくデニッシュ系の製品を揃えることで、既存のパン屋との差別化を図りました。

品質を追求した結果、価格は当時の一般的な菓子パンの約3倍となる50円に設定されましたが、内外装や包装紙、看板などを含めたコーポレートアイデンティティの確立に力を入れたことで、高価格帯での販売を可能にしました。

元町店はテスト的な出店であり、業界の主流であった少品種大量生産とは真逆の多品種少量生産に挑戦し、セントラルキッチンで製造した冷凍生地を使わず、店舗内の工場で一貫生産して直売する、本来のインストアベーカリーの形態で開業しました。

開業当初は、主力商品のフランスパンの売れ行きが伸び悩みましたが、YWCAで募金箱を設置して無料配布し、集まった募金を交通遺児に寄付するなどの慈善活動を行ったことが新聞で報道され、徐々に売上が伸び始めました。

その後、バターを付けたフランスパンの試食や、角切りチーズをフランスパンの生地に混ぜて焼いた「チーズバタール」を発売するなど、テコ入れ策を講じた結果、テレビ番組などで取り上げられる機会も増え、売上は順調に伸びていきました。

フジパンとの合併と独立

ポンパドウルが軌道に乗り始めた頃、昭和堂にフジパンから合併の申し入れがありました。量産パンの卸売りという昭和堂の主力部門と、成長が見込まれるインストアベーカリー事業との間で将来的に軋轢が生じること、また、インストアベーカリーの生産性の低さを克服することが容易ではないと考えたことから、昭和堂はフジパンに事業譲渡することを決断しました。

1970年（昭和45年）6月1日、昭和堂はフジパンに吸収合併され、インストアベーカリーのポンパドウルは分離独立しました。

1971年（昭和46年）12月には、横浜・伊勢佐木町商店街の入り口付近、関内駅近くに伊勢佐木町店をオープンし、2階にケーキ売り場、3階にレストランを併設しました。

ポンパドウルの特徴

ポンパドウルは、全店舗に製パン工場を持つ、真のインストアベーカリー・チェーンです。セントラルキッチンで製造した冷凍生地を焼き上げるだけのベーカリーとは一線を画し、各店舗で個別に生産しながらも、店舗間で味や品質に差が生じないように、本社にベテラン職人による技術指導部門を設け、問題のある店舗を改善するまで指導し続ける体制を構築しています。

また、チェーン全体で約300種類のパンの中から、各店舗が150～200種類を選んで製造・販売しています。焼き上げから2時間以内が最も美味しいとされるフランスパンを1日に8回焼き上げるなど、常に焼き立てパンを提供するための多頻度生産を行っています。鮮度を保つために焼き上げ回数を減らすことはなく、販売量が少ない店舗では1回の生産数をあえて少なくするほか、朝10時の開店時に焼き上げるために午前3時から仕込みが必要となるため、早朝勤務者の宿泊や通勤費用も惜しまない営業形態をとっています。

焼き立てパンを求める消費者が多く見込める立地を選び、店舗併設の工場の生産能力分の売上が見込める市場規模のところのみ出店し、多品種少量生産を行う各店舗で、売れ行きに合わせたきめ細かな数値管理を行わせるため、各店舗に製造部門と販売部門の責任者を置き、両者協議による店舗運営を行っています。店舗ごとに売上だけでなく原価管理を含めた月次決算のレポートを作成し、各店舗の責任者が数値管理に強くなる仕組みも構築しています。

こうした各店舗での数値管理を徹底させるシステムは、1980年代半ばの時点で本社管理部門を全従業員数の1％強に抑えることを可能にし、現場主義と間接部門の合理化の両立を実現し、収益力の向上に繋がりました。

全国展開

神奈川県内での店舗展開の後、1976年（昭和51年）に新宿店を出店し、東京都へ進出。1980年代半ばには神奈川県・東京都・千葉県の首都圏に25店舗を展開するインストアベーカリーチェーンへと成長しました。

30店舗を超えた頃から、多摩川を境に「横浜ポンパドウル」と「東京ポンパドウル」に分けて運営し、課題点の早期把握と改善を目指しました。

関東地方でのシェアを確立した後、全国チェーン展開を開始。1986年（昭和61年）6月5日に井筒屋小倉本店地下に小倉店をオープンし、九州へ進出しました。

1994年（平成6年）5月28日には、西友が運営する「小手指EPO」1階に小手指店をオープンし、初のイートインコーナーを設置しました。

同年11月5日には、東武宇都宮百貨店1階に宇都宮店をオープン。酒売り場跡地で店舗面積が約72m2と狭く、店舗内に工場を併設できなかったため、百貨店の裏側に仮設の工場建屋を設置し、百貨店側の負担で店内までパンを運ぶという、従来とは異なる形式での出店となりました。

1998年（平成10年）10月1日にオープンした吉祥寺店では、初めてマネージャーを含む全員を女性とするなど、女性社員の活用にも取り組み始めました。

2015年（平成27年）1月時点で、日本全国に83店舗を展開する全国チェーンへと成長しました。

年表

1947年（昭和22年）8月22日 - 三藤喜一が川崎市で「昭和堂」として製パン業を創業。
1950年（昭和25年）2月 - 「株式会社昭和堂」を設立して法人化。
1963年（昭和38年）11月 - 「株式会社昭和堂」が川崎市に機械化パン工場を開設。
1965年（昭和40年）8月 - 茅ケ崎工場を開設。
1969年（昭和44年）11月 - ポンパドウル1号店として横浜元町店を横浜市中区元町に開店。
1970年（昭和45年）
2月28日 - 「チーズバタール」を発売。
6月1日 - 「昭和堂」がフジパンに吸収合併され、ポンパドウルを分離独立。
1971年（昭和46年）12月 - 横浜・伊勢佐木町商店街の入り口付近の関内駅近くに伊勢佐木町店を開店。
1976年（昭和51年） - 新宿店を出店し、東京都へ進出。
1986年（昭和61年）6月5日 - 井筒屋小倉本店地下に小倉店を開店し、九州へ進出、全国展開を開始。
1994年（平成6年）
5月28日 - 当社初のイートインコーナーを開設した小手指店を開店。
11月5日 - 当社初の工場と店舗が直結していない宇都宮店を開店。
1998年（平成10年）10月1日 - 全員が女性の吉祥寺店を開店。

過去に存在した事業所

川崎工場（神奈川県川崎市昭和1-50）
茅ヶ崎工場（神奈川県茅ヶ崎市今宿360）

その他

2011年に、三藤喜一の息子である三藤達男氏が、父の人生と自身の半生を綴った連載を神奈川新聞に掲載。連載をまとめた書籍『幸せを運ぶ赤い袋』が出版されている。
* 2012年のCoupe du Monde de la Boulangerieにおいて、株式会社ポンパドウルの佐々木卓也氏がメンバーの一人である日本代表チームが優勝した。

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