マドラス包囲戦

マドラス包囲戦：イギリスの勝利とフランスの失策

マドラス包囲戦は、第三次カーナティック戦争中の1758年12月から1759年2月にかけて、フランス王国がイギリス東インド会社領のマドラスを包囲した戦いです。フランス軍の猛攻に対し、イギリス軍は持ちこたえ、最終的にフランス軍は撤退しました。この勝利はイギリスにとって重要な意味を持ち、後のインドにおける勢力拡大につながりました。

背景：植民地を巡る英仏の対立

イギリスとフランスは、インドにおける植民地建設を巡って長年対立していました。1746年のマドラスの戦いではフランスが勝利しマドラスを占領しましたが、1748年にイギリスに返還されました。その後も両国の対立は続き、1757年にはロバート・クライヴの活躍によりイギリスが優勢となります。1758年、フランスはラリー伯爵を援軍として派遣し、コロマンデル海岸での作戦を開始します。イギリス軍の多くがベンガル地方にいたため、この動きはイギリスに危機感をもたらしました。

ラリー伯爵は当初、1758年6月にマドラスを攻撃する予定でしたが、資金不足からタンジョール攻撃に失敗。さらにモンスーンの影響で侵攻が遅れ、フランス軍がマドラスに到着したのは12月になっていました。この遅延により、イギリスは防衛の準備を整える時間を得て、駐留軍を4,000人に増強しました。

包囲戦の経過

初期の攻撃と市街戦

当時のマドラスは、防御が手薄な現地住民の居住区「ブラック・タウン」と、セント・ジョージ要塞を含むヨーロッパ人居住区「ホワイト・タウン」に分かれていました。12月14日、フランス軍は抵抗を受けることなくブラック・タウンに入城し、略奪を開始しました。これに対し、イギリス軍はウィリアム・ドレイパー率いる600人の部隊を出撃させ、フランス兵を攻撃。市街戦の末、両軍合わせて300人の死者を出し、イギリス軍はセント・ジョージ要塞に撤退しました。この戦闘は決定的ではありませんでしたが、フランス軍の士気を大きく低下させました。

砲撃の開始と士気の低下

フランス軍はブラック・タウンを制圧した後、セント・ジョージ要塞の包囲を開始しました。しかし、攻城兵器の弾薬不足により、攻撃開始まで3週間を要しました。1759年1月2日、フランス軍は5日間の砲撃を行い、歩兵による突撃を試みましたが、要塞を攻略することはできませんでした。効果のない攻撃が続いたことで、フランス軍の士気はさらに低下し、逃亡やイギリスへの寝返りが相次ぎました。

総攻撃とフランス軍の撤退

数週間にわたる砲撃により、マドラスの防御は綻びを見せ始めました。しかし、1月30日、イギリス海軍のフリゲート艦がフランスの海上封鎖を突破し、マドラスに資金と増援を届けました。さらに、ジョージ・ポコック提督率いる大艦隊がマドラスに向かっているという情報がもたらされました。この状況を受け、ラリー伯爵は総攻撃を命じましたが、2月16日、増援部隊を乗せたイギリス船が到着すると、フランス軍は撤退を決定しました。

その後：イギリスの優位確立へ

マドラスの勝利は、イギリスにとって1759年の奇跡の年における重要な出来事の一つとなりました。この勝利を機に、イギリスはインドで反撃を開始し、1760年のヴァンディヴァッシュの戦いでフランスを破り、1761年にはフランスの拠点ポンディシェリーを占領しました。マドラス包囲戦の失敗は、フランスのインドにおける勢力後退を決定づける出来事となりました。

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