コロマンデル海岸

コロマンデル海岸：インド南東部の自然と歴史が交差する地

コロマンデル海岸は、インド亜大陸の南東部、クリシュナ川河口からカリメール岬にかけてのベンガル湾に面した、全長約720キロメートルの海岸線を指します。この地域は、豊かな自然と歴史的な背景が複雑に絡み合い、独特の文化を育んできました。

地理的特徴

コロマンデル海岸は、デカン高原東部の東ガーツ山脈の東側に位置し、北東モンスーンの影響を強く受ける地域です。特に10月と11月には雨が多く、クリシュナ川、ペンナ川、パーラール川、ポンナイヤル川、カーヴェーリ川などの河口が形成され、プリカット湖やカリヴェリ湖などの湖沼も点在します。

主要な都市としては、チェンナイ（旧マドラス）、ポンディシェリ、カッダロール、ナーガパッティナムなどが挙げられ、特にチェンナイは、この地域の経済と文化の中心地として重要な役割を果たしています。また、マハーバリプラムは、石窟寺院で知られる歴史的な観光地です。

豊かな生態系

この地域には、ベニサガリバナ、アラビアゴムモドキ、パーキンソニア・アクレアタなどのマングローブ林やヤシ林が広がっており、多種多様な動植物が生息しています。鳥類では、ブロンズトキ、ケリ、レンカク、アジアヘビウ、ホシバシペリカン、クロトキ、ヘラサギ、ゴイサギ、インドトキコウ、シロハラサギ、ヘラシギ、カラフトアオアシシギ、ヒドリガモ、オナガガモ、シマアジ、カラフトワシ、カタシロワシ、カワアジサシなどが見られます。

哺乳類では、ジャングルキャットやボンネットモンキー、ジャッカルなどが生息し、爬虫類では、Daboia siamensis、ニシキヘビ属、スナボア亜科、ヒメウミガメ、インドハコスッポン、インドホシガメなどが見られます。また、魚類、ショウナンエビ、ウシエビ、カニなどの水生生物も豊富です。

コロマンデル海岸には、ラムサール条約に登録されている湿地も多く、チェンナイ南郊のパッリカラナイ湿地、カリキリ鳥類保護区、ヴェダンターンガル鳥類保護区、ポンディシェリ北郊のカルヴェリ鳥類保護区、ピチャヴァラム・マングローブ、ヴァドゥヴール鳥類保護区、ウダヤマルタンダプラム鳥類保護区などが、その生物多様性を保全する上で重要な役割を果たしています。

歴史的背景

9世紀から13世紀にかけて、チョーラ王朝がこの地域で繁栄しました。16世紀には、ポルトガルがナーガパッティナム、サントメ・デ・メリアポール（現在のマイラポール）、プリカットに交易拠点を築き、この地域は「サントメ（桟留）」とも呼ばれました。

しかし、17世紀になると、オランダがナーガパッティナムなどを奪い、ポルトガルの影響力は低下しました。オランダは、サドラスやコヴェロンなどにも拠点を築き、イギリスもマスリパタムやマドラス（チェンナイ）に商館を建て、マドラスにはセント・ジョージ要塞を建設しました。フランスもポンディシェリやカーライッカールなどに拠点を置き、デンマークもこの地域への進出を試みました。

これらのヨーロッパ諸国は、インド産の綿織物を扱うことを主な目的としていました。最終的にはイギリスがこの地域を確保しましたが、フランスもポンディシェリなどに拠点を保持し続けました。

日本との関わり

歴史的に日本では、コロマンデル海岸の綿織物や革製品を「桟留縞」や「桟留革」と呼びました。これは、ポルトガルがこの地域を「サントメ」と呼んでいたことに由来します。日本とこの地域の歴史的なつながりは、これらの製品を通じて感じることができます。

このように、コロマンデル海岸は、豊かな自然と多様な文化、そして国際的な歴史的背景が複雑に絡み合った地域です。この地域を訪れる人々は、その美しい風景と歴史の深さに魅了されることでしょう。

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