マリインスキー劇場

マリインスキー劇場は、ロシアのサンクトペテルブルクに位置する、オペラとバレエのための歴史ある劇場です。その歴史は1783年にエカチェリーナ2世の勅令によって設立された帝室劇場に遡ります。

劇場の変遷

劇場の名称は、その歴史の中で都市名が変遷したのに伴い、何度も変更されてきました。以下に主な変遷をまとめます。

1860～1920年: 帝室マリインスキー劇場、帝室劇場
1920～1924年: Государственный академический театр оперы и балета（国立アカデミー・オペラ・バレエ劇場）
1924～1935年: レニングラード劇場
1935～1992年: キーロフ劇場
1992年～現在: マリインスキー劇場

劇場の歴史

当初は「石の大劇場」として親しまれ、1859年に現在のネオ・ビザンチン様式の劇場が竣工。皇帝アレクサンドル2世の皇后マリア・アレクサンドロヴナにちなみ、「マリインスキー帝室劇場」と命名されました。1886年には、カーメンヌイ劇場の閉鎖に伴い、オペラとバレエが全面的に移管され、劇場は黄金時代を迎えます。

スターリン時代には、セルゲイ・キーロフの暗殺を悼み「キーロフ劇場」と改名されましたが、ソ連解体後の1992年に現在の「マリインスキー劇場」に戻りました。

2003年には、新築部分の設計コンクールでポストモダン派の建築家D・ペローが優勝。2013年には、劇場新館が竣工し、ウラジーミル・プーチン大統領が出席して記念式典が行われました。

バレエとオペラ

この劇場では、チャイコフスキーの「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」「白鳥の湖」など、数々のクラシック・バレエの名作が初演されています。また、ロシアの古典オペラの多くもこの劇場で世界初演されており、ミハイル・グリンカ、モデスト・ムソルグスキー、アレクサンドル・ボロディン、ニコライ・リムスキー＝コルサコフなど、ロシアを代表する作曲家たちの作品が上演されました。

マリインスキー・バレエ、マリインスキー・オペラ、マリインスキー劇場管弦楽団は、ここを拠点として活動しており、世界的な評価を受けています。

日本公演

マリインスキー・オペラは、1993年に初来日して以来、定期的に日本公演を行っています。

マリインスキー劇場沿海州別館

2016年には、ウラジオストクにマリインスキー劇場沿海州別館が開場。サンクトペテルブルクの劇場で活躍する歌手やバレエダンサーが公演を行っています。

マリインスキー劇場アカデミー

マリインスキー劇場の総裁であるヴァレリー・ゲルギエフの姉、ラリッサ・ゲルギエワによって設立された若手歌手育成のための研修所。世界中から選抜された若手歌手がオペラを中心に、歌曲、舞踊、フェンシング、演技などを学び、プロの音楽家として活躍しています。アンナ・ネトレプコ、ダニエル・シュトーダ、オルガ・プードヴァなどの世界的な歌手もこのアカデミー出身です。日本人ではソプラノ歌手の中村初恵がこの研修所で学びました。

歴代芸術監督

コンスタンティン・リャードフ（1860年 - 1869年）
エドゥアルド・ナープラヴニーク（1869年 - 1916年）
エミール・クーパー（1919年 - 1924年）
ウラジミール・ドラニシニコフ（1925年 - 1936年）
アリー・パゾフスキー（1936年 - 1943年）
ボリス・ハイキン（1944年 - 1953年）
セルゲイ・エリツィン（1953年 - 1956年）
エドゥアルド・グリクーロフ（1956年 - 1960年）
ニヤジ・ハジベヨフ（1960年 - 1961年）
アレクサンドル・クリモフ（1961年 - 1967年）
コンスタンチン・シメオーノフ（1967年 - 1975年）
ヴィクトル・フェドートフ（1975年 - 1976年）
ユーリ・テミルカーノフ（1976年 - 1988年）
* ヴァレリー・ゲルギエフ（1988年 - ）

マリインスキー劇場は、サンクトペテルブルク歴史地区と関連建造物群の一部として、ユネスコの世界遺産に登録されており、ロシアの文化遺産としてその重要性が認められています。

この劇場は、長年にわたり、ロシアの音楽とバレエの発展に貢献し、世界中の芸術愛好家にとって特別な存在であり続けています。

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