マリキータ

マリキータ：涙と奇跡の競走馬物語

1981年4月4日生まれの競走馬、マリキータ。その生涯は、輝かしい勝利と苦難、そして奇跡的な再会というドラマチックな物語で彩られています。日本中央競馬会（JRA）育成の抽選馬として270万円で頒布された彼女は、デビューからその類まれな才能を示しました。

華々しいデビューと挫折

1983年8月、新潟の新馬戦でデビューしたマリキータは、中野渡清一騎手を鞍上にレコードタイムで圧勝。続く新潟3歳ステークスでも、ハイペースで逃げ切り、2着に8馬身差をつける圧巻の勝利を収めました。このレースでの走破タイムは、前走のレコードを1秒以上更新するものでした。勢いに乗って挑んだ京成杯3歳ステークスでも2着と好走しますが、朝日杯3歳ステークスでは発馬でつまずき、期待を裏切る結果に終わります。その後、骨膜炎を発症し、長期休養を余儀なくされます。

復帰後も思うように成績は伸びず、右膝骨折による長期休養を挟むなど、苦難の時代が続きます。1985年夏までには、6戦中4戦で二桁着順という不振に陥り、かつての輝きを失いかけていました。

渡米と行方不明

環境を変えることで復活を期待し、マリキータはアメリカへ渡ります。しかし、言葉の壁や文化的差異、そして担当エージェントの病気など、数々のトラブルに見舞われます。最終的に、連絡が途絶え、マリキータはアメリカで完全に消息不明となってしまいました。

奇跡の再会と繁殖生活

それから5年以上が経過した1990年10月、ケンタッキー州の繁殖牝馬セールで、社台グループ総帥の吉田善哉氏によってマリキータは発見されます。ジェイドハンターの仔を身ごもっていた彼女は、行方不明となっていたマリキータだったのです。高額な費用を投じて買い戻されたマリキータは、日本へ帰国。北海道三石町のパシフィック牧場で繁殖生活に入ります。

マリキータはその後、12頭の産駒を産み落としました。そのうち5頭が中央競馬で勝利を収め、繁殖牝馬としての成功も収めました。アメリカで残した3頭の産駒も活躍し、孫の世代には10勝以上を挙げた馬も出ています。2004年10月、用途変更により繁殖生活から引退。その後の消息は不明となっています。

マリキータの足跡

マリキータの生涯は、競走馬としての成功と挫折、そしてアメリカでの行方不明と奇跡の帰国という、ドラマチックな物語です。彼女の物語は、競走馬の厳しさだけでなく、人々の尽力と馬への愛情を強く感じさせる感動的なものです。短い期間ではありましたが、その才能と気性で多くの人々を魅了したマリキータは、競馬史にその名を残す、忘れられない名馬と言えるでしょう。彼女の血統は、現在も日本の競馬界で受け継がれています。

参考文献

『競馬名馬読本 - 思い入れ、思い込みの名馬事典』（宝島社、1991年）
『優駿』1998年10月号（日本中央競馬会）吉川良「涙の力で、マリキータよ」

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