ミサゴ

ミサゴ：魚を捕る猛禽類の生態と文化

ミサゴ(Pandion haliaetus)は、タカ目ミサゴ科に属する鳥類です。別名ウオタカとも呼ばれ、その名の通り魚を主食とすることで知られています。世界中の極地を除く地域に広く分布し、日本でも全国で見られますが、地域によっては渡り鳥としての側面も持ちます。

分布と生息環境

ミサゴは、ユーラシア大陸、北アメリカ大陸、オーストラリアの沿岸部などで繁殖し、北部の個体は冬期にはより温暖な地域へ渡ります。日本では、留鳥として全国に分布していますが、地域差があり、北日本では冬に数が減り、南西諸島では夏に数が減ることが知られています。西日本ではかつては普通に見られる鳥でしたが、近年は減少傾向にあります。

ミサゴは主に海岸に生息しますが、内陸部の湖沼や河川、河口などにも生息します。水面を低空飛行しながら獲物を探し、見つけるとホバリングを行い、急降下して魚を捕らえます。春と秋の渡りの時期には、長野県などの内陸部を移動するミサゴも観察されています。

形態と特徴

ミサゴは全長54～64cm、翼開張150～180cm、体重1.2～2kgの大きさです。雄雌で色彩はほとんど変わりません。背と翼の上面は黒褐色、腹部と翼の下面は白色で、顔も白いのが特徴です。眼から首にかけて太い黒褐色の線が入っています。後頭部には小さな冠羽があります。くちばしは黒く、足は青灰色です。

他のタカ類とは異なり、ミサゴは魚を捕らえるための棘状突起（spicule）を足の外側に持ち、第1趾を反転させることができます。また、鼻孔に弁があり、羽毛は密生して油で覆われているため、耐水性に優れています。これらの特徴は、水中に潜って魚を捕るミサゴの生活に適応したものです。

生態

ミサゴは主に魚を捕食しますが、爬虫類、鳥類、貝類なども食べます。狩りは水面を低空飛行して獲物を探すことから始まります。獲物を見つけると、ホバリングを行い、急降下して水中へ足を伸ばし、両足で魚を捕らえます。和名の由来には諸説ありますが、水面を叩く音に由来するという説もあります。西日本では、この水面に突入する音を「ビシャ」や「ビシャゴ」と呼ぶ地域もあります。

繁殖期は5～7月で、水辺の岩や樹上に木の枝で巣を作ります。2～3個の卵を産み、抱卵期間は約35日です。主にメスが抱卵し、オスはメスに餌を運びます。雛は約52～53日で巣立ち、その後1～2ヶ月で親から独立し、成熟するまでには3年かかります。

分類

ミサゴは単型のミサゴ科を形成し、タカ科と姉妹群の関係にあります。両科をまとめてタカ上科とすることもあります。ミサゴ科をタカ科に含める分類もありますが、形態、染色体、遺伝子、化石記録などから、科レベルの差異があるとされています。タカ科に含める場合は、ミサゴ亜科として分類されます。

ミサゴ属には、P. haliaetusのみとする説と、P. cristatusを別種とする説があります。P. cristatusはスラウェシ島以東のオーストラリア区に分布し、P. haliaetusより小型で、渡りを行いません。

文化と歴史

日本では古くからミサゴは魚を捕るタカとして知られ、『日本書紀』など多くの文献に記述が見られます。『方丈記』では、鴨長明がミサゴの孤独な生態を自身の庵での生活に例えています。

また、ミサゴが捕らえた魚を貯蔵し、それが自然発酵して「ミサゴ鮨」になったという話が、『本草綱目啓蒙』などに記されています。このミサゴ鮨は、『甲子夜話』や『椿説弓張月』などにも登場し、現在でも「みさご鮨」という屋号の寿司屋が存在します。

保全状況

ミサゴは、環境省レッドリストで準絶滅危惧種に指定されています。生息環境の悪化や、その他の要因による個体数の減少が懸念されており、保全の取り組みが重要です。

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