ミスティックアーク

『ミスティックアーク』は、1995年 7月14日にエニックス（現：スクウェア・エニックス）からスーパーファミコン向けにリリースされたロールプレイングゲームです。開発はプロデュース！が担当しました。プロデューサーは菊本裕智氏と斉藤陽介氏、音楽は森彰彦氏、そしてキャラクター・モンスターデザインはイラストレーターの山田章博氏と米田仁士氏が手掛けています。

物語は、不思議な力によって人形に変えられ、見知らぬ神殿に運び去られてしまった主人公の視点で展開します。主人公は偶然にも人間の姿を取り戻し、自身が存在するべき元の世界へ帰るため、そして神殿に囚われた他の人形たちを救うため、世界の扉を開く鍵とされる「アーク」と呼ばれる七つの精霊を探し求める冒険へと旅立ちます。物語の舞台は、人間が生まれてくる前の世界。特に、子供だけが暮らす幻想的な世界をはじめとする、個性豊かで独特な世界観が本作の大きな魅力となっています。

ゲームプレイは、探索と謎解きに重点が置かれています。各地を移動する中で、怪しい場所や気になる調度品などを調べると、まるで絵本の一枚絵のような美しいビジュアルが表示され、その場で様々な仕掛けに挑むことになります。単に調べるだけでなく、触ったり、動かしたり、手に入れたアイテムや物語の鍵となるアークを駆使したりと、アドベンチャーゲームのような多様な手段で謎を解き明かし、道を切り拓いていきます。物語の進行度によって解ける謎が変わることもあり、以前訪れた場所に戻って再探索する面白さも用意されています。

物語の中核をなす七つのアークは、探索の様々な場面で役立つだけでなく、武具に宿すことで攻撃や防御に属性効果を付与し、戦闘を有利に進めるための重要な要素となります。また、冒険は基本的に主人公一人で始まりますが、特定のアークを手に入れると、主人公が最初に目覚めた神殿に置かれているフィギュアにアークの力を宿すことで、仲間として実体化させ、共に旅することができます。最大で主人公を含めた3人パーティを組むことが可能ですが、戦闘中にHPが尽きた仲間はフィギュアに戻ってしまい、再び神殿へ迎えに行く必要があるというユニークなシステムも特徴です。

戦闘はランダムエンカウントではなく、敵が出現するエリアでは画面左上に表示される「クリスタル」がレーダーとして機能します。青い点である主人公が敵を示す白い点に触れると戦闘が始まりますが、レーダーの表示をよく見て移動すれば、地形に遮られない限り、敵との接触を避けて戦闘を回避することもできます。ただし、一部のダンジョンではクリスタルが無効化される場所も存在します。

主人公が巡る世界は、「七つの世界」と総称される個性豊かな場所ばかりです。主な世界は以下の通りです。

女神の島: 冒険の拠点となる場所。敵が現れず、謎解きに集中できます。
砂の世界: 海賊猫が争う砂漠。力のアークを入手できます。
果物の世界: 巨大果実の中に街。水不足と巨大昆虫が問題。光のアークが手に入ります。
子供の世界: 子供しかいない不思議な場所。知恵のアークを入手できます。
緑の世界: 色や音、時間が失われた世界。火のアークを入手できます。
風の世界: 風が荒れ狂う巨人伝説の地。木のアークが入手できます。
闇の世界: 無人の洋館。物語の黒幕「闇」が潜む場所。水のアークを入手できます。ここはこの世界限定のシステムがあり、主人公一人で進む必要があります。
おとぎの世界: おとぎ話の登場人物たちが暮らす場所。闇のアークを入手できます。

これらの世界を巡り、アークを集めることで、主人公は自身が存在するべき世界へと繋がるラストダンジョンへの道を開きます。

登場人物も個性的です。プレイヤーが操作する主人公は、性別を選択可能で、魔法剣士としてモンスターをフィギュアに変える特殊能力を持ちますが、物語中一切言葉を発しません。神殿にフィギュアとして置かれ、アークの力で実体化する仲間候補たちは、魔法使いのミレーネ、頑丈な鉄人のラックス、身体能力に優れた闘士のリーシャイン、素早い忍者のトキオ、強大な力を持つ鬼人のカミオー、回復や補助を得意とする僧侶のメイシャと、それぞれ異なる能力と背景を持っています。彼ら以外のNPCも、物語の導き手である女神や、世界の異変の元凶である黒幕「闇」、各世界で出会うユニークな住人たちなど、印象的なキャラクターが登場し、独特の雰囲気を醸成しています。

音楽は森彰彦氏が手掛けており、幻想的でどこか切ないメロディがゲームの世界観を彩ります。キャラクター・モンスターデザインはイラストレーターの山田章博氏と米田仁士氏が担当しており、彼らの繊細で独特なタッチがゲームのビジュアルを特徴づけています。

本作はゲーム誌『ファミコン通信』のクロスレビューで合計31点（満40点）を獲得し、シルバー殿堂入りを果たすなど、当時から評価が高く、特にその独創的な世界観やシステム、練り込まれたシナリオが評価されました。ゲームムック『ハード末期に発売された名作ゲーム集』では、「オリジナルのシステムなども数多いが、初心者でも親しみやすい作品に仕上げられている」「全体を通じて『生命の誕生』をテーマとした重厚かつ衒学的なシナリオもやり応え十分だ」と評されています。後にPlayStationで続編『ミスティックアークまぼろし劇場』（1999年）が発売されていますが、そちらはアドベンチャーゲームへとジャンルが変更され、システムも一新されています。また、同じエニックスから発売されたスーパーファミコン用ソフト『エルナード』（1993年）や『ブレインロード』（1994年）とは、システムや登場人物の名称などに共通点が見られ、関連性が示唆されています。

『ミスティックアーク』は、スーパーファミコン後期の作品として、その独自性の高いシステム、魅力的なアートワーク、そして「生命の誕生」をテーマにした深みのある物語によって、多くのプレイヤーの記憶に残る一作です。

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