ヨシキリザメ

ヨシキリザメ：生態から飼育の難しさまで

ヨシキリザメ(学名: Prionace glauca、英名: Blue Shark)は、メジロザメ科に属するサメの一種です。アオザメ、アオブカ、ミズブカなど、様々な地方名でも呼ばれています。世界中の温帯から熱帯の海に広く分布し、その分布域はサメの中でも最も広いと言われています。

生態

ヨシキリザメは、全長2～3メートルに達し、細長い流線型の体型が特徴です。背側は鮮やかな青色で、腹側は白色をしています。この美しい青色の体色は、英名の“Blue Shark”の由来となっています。

主な餌は比較的小型の硬骨魚類やイカですが、無脊椎動物、小型のサメ、クジラなどの死骸、稀に海鳥なども捕食します。餌の好みはあまりなく、機会があれば様々なものを食べるようです。暖流と寒流がぶつかる海域を好んで生息し、深海に潜って餌を探すこともあります。

繁殖は胎生で、一度に4～135尾もの子供を産みます。妊娠期間は9～12ヶ月で、メスは精子を体内に長期間保存できるため、一度の交尾で複数回の出産が可能と考えられています。寿命は20年以上と推定されています。

分布と回遊

ヨシキリザメは、世界中の熱帯から温帯の海域に広く分布しています。外洋を好み、水深350メートルまでの範囲で生息し、水温12～20℃を好む傾向があります。

日本近海では、黒潮と親潮がぶつかる潮目付近で生まれ、幼魚期を過ごします。成長するにつれて、オスとメスで生息域が分かれるようになり、成熟すると再び同じ海域で生活するようになります。このオスとメスでの生息域の分離は、サメ同士の捕食関係によるものだと推測されていますが、詳しい理由は分かっていません。

人との関わり

漁業

日本では、ヨシキリザメは最も水揚げ量の多いサメです。マグロ延縄漁などでの混獲が主で、狙って漁獲されることは少ないです。

ヨシキリザメの肉は、かまぼこなどの練り製品の原料として利用され、鰭はフカヒレとして珍重されています。特に気仙沼漁港では、日本の食用サメの約9割が水揚げされており、その多くはヨシキリザメとネズミザメです。ヨシキリザメの肉は水っぽく、独特のアンモニア臭も強いですが、加工品としての需要が高いため、ネズミザメよりも高値で取引されています。

近年では、軟骨を原料とした健康食品も販売されています。ただし、体内に水銀が含まれるため、妊婦は摂取量に注意する必要があります。厚生労働省は、ヨシキリザメを妊婦の摂取に注意が必要な魚介類として指定しています。

危険性

ヨシキリザメは、人を襲うこともある危険なサメとして知られています。過去には、人身事故が複数報告されており、その中には死亡事故も含まれます。攻撃前に、遊泳者の周囲をゆっくりと旋回する行動が見られることがあるため、注意が必要です。

飼育の難しさ

ヨシキリザメは、飼育が非常に難しいサメとして知られています。世界中の水族館が飼育に挑戦していますが、長期飼育に成功した例は非常に少ないです。飼育の失敗例として、水槽との衝突による怪我、他のサメとの共食い、輸送中のストレスなどが挙げられます。近年、日本のいくつかの水族館が長期飼育に成功した例がありますが、それでも飼育は容易ではありません。

まとめ

ヨシキリザメは、世界中に広く分布する重要なサメであり、漁業や食文化において重要な役割を果たしています。一方で、人襲撃や飼育の難しさなど、その危険性や生態の複雑さも知られています。今後の研究により、ヨシキリザメの生態や保全に関する理解が深まることが期待されます。

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