ラダガスト

ラダガスト - 森を愛する魔法使い

ラダガストは、J・R・R・トールキンの中つ国を舞台とした小説『指輪物語』に登場する魔法使い（イスタリ）の一人です。白の会議のメンバーであり、「茶色の賢者」として知られています。

概要

彼は色の変化や形に精通しており、薬草や動物に関する深い知識を持っていました。特に、大鷲のグワイヒアをはじめとする鳥たちと親しく、彼らの友人でした。アマンの地でヴァラールに仕えていた頃、彼の名はアイウェンディル（「鳥を愛する者」の意味）でした。彼は、中つ国の自由の民が第二の冥王サウロンを打倒するのを助けるために送り込まれた5人のマイアールの一人であり、ヤヴァンナによって推薦されました。彼は白のサルマンと共に中つ国へやって来ました。

非常に変わり者の魔法使いであった彼は、森や中つ国の鳥獣を愛し、森に住み着きました。そのため、サルマンから怒りを買い、注意を受けましたが、改めることはありませんでした。サルマンからは軽蔑され、「うつけ者」と呼ばれ、白の会議にも呼ばれることはありませんでした。

サルマンに欺かれ、灰色のガンダルフをオルサンクの塔に誘い込む手引きをしてしまうものの、決して無能ではありませんでした。彼の誠実な性格は、サルマンの意図を超えてガンダルフを助けることになります。危険な任務に赴くガンダルフを助けるため、友人である動物たちに協力を呼びかけた結果、サルマンに囚われたガンダルフが逃げ出す一助となりました。結果的にラダガストは、サルマンの裏切りをガンダルフが知るきっかけを作っただけでなく、その裏切りを周囲に知らしめることにも貢献しました。そのため、ガンダルフは彼の誠実さに感謝し、「偉大な魔法使いと言えなくもない」と評しています。

ガンダルフによれば、ラダガストは極めて誠実な性格であるため、陰謀や裏切りとは無縁の存在であり、サルマンが自身の野望に誘おうとしても、決して応じることはなかっただろうとのことです。『ホビットの冒険』に登場する熊人ビヨルンも、彼のことを「魔法使いにしては悪いやつではない」と好意的に評価しています。

指輪戦争が終結し、サウロンが滅び、イスタリが中つ国での使命を終えた後も、ラダガストがガンダルフと共にヴァリノール行きの船に乗ったという記述はどの資料にもありません。鳥獣を愛するあまり、中つ国に留まり続けたと言われています。

映画版

ピーター・ジャクソン監督の映画『ロード・オブ・ザ・リング』では、ラダガストへの言及は省かれ、彼の出番はありません。映画におけるグワイヒアの来訪の先触れは一匹の蛾が務めていますが、『ホビット 思いがけない冒険』には登場し、闇の森やドル・グルドゥアの異変をいち早く察知し、ガンダルフに警告するという重要な役割を担っています。

ラダガストは、その独特な個性と誠実さで、中つ国の歴史において重要な役割を果たした魔法使いと言えるでしょう。

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