三井淳平

三井 淳平（みつい じゅんぺい）

1987年4月11日生まれ、兵庫県明石市出身のレゴビルダー。日本で初めてレゴ認定プロビルダーの称号を得た人物として知られています。レゴファンの間では、その卓越した技術から「神」と称されることもあります。

生涯と活動

研究者である父と専業主婦の母のもとに生まれた三井氏は、3歳年上の兄の影響を受け、生後間もない頃からレゴブロックに親しんでいました。幼少期から誕生日プレゼントは常にレゴであり、自然とその世界に没頭していきます。中学3年生の夏休み、インターネット上で海外の壮大なレゴ作品に触発され、自らのオリジナル作品制作に挑戦を開始。秋に所属していた野球部を辞めたことで、より深くレゴの世界に打ち込む時間を得ました。手持ちのブロックだけでは足りず、海外のファン同士がパーツを売買するオンラインマーケット「BrickLink」で大量にブロックを調達。これにより、全長2メートルにも及ぶ「サターンV型ロケット」という、初めての大型作品を完成させます。

灘中学校・高等学校在学中もレゴへの情熱は衰えず、高校3年時の文化祭では等身大のドラえもんを制作し、注目を集めました。同時期、自作ホームページに掲載していた作品がテレビ東京の番組スタッフの目に留まり、大学受験を控えた多忙な時期にも関わらず、『TVチャンピオン』の「第2回レゴブロック王選手権」への出場依頼を受けます。この大会で見事準優勝を果たし、デンマークでの決勝進出という快挙を成し遂げました。

現役で東京大学理科一類に進学後もレゴへの取り組みは続きます。インターネットで知り合ったレゴ好きの先輩たちと共に、2007年1月には日本の大学としては初となる「レゴ部」を創設しました。同年の五月祭では、1/40スケールで精巧に再現した安田講堂を発表。これがMay Festival Awardsの文化部門で1位に選ばれるなど高い評価を受け、三越日本橋本店での「'07こども博」や、東京大学創立130周年記念事業「知のプロムナード」での常設展示へと繋がりました。その後も、東大・赤門や駒場キャンパスといった学内の建造物をレゴで表現する活動を展開します。

大学での活動と並行して、個人制作にも力を注ぎました。中学3年生の頃から約6年4ヶ月、20万個ものブロックを用いて制作した1/40スケールの戦艦大和は、2009年に完成。レゴ愛好家向けの海外サイトMOCpages.comで、2010年7月に「MOC Of The Year」に選出されるなど、国際的な評価を獲得しました。

2010年3月に東京大学工学部を卒業後、チャリティーイベントへの作品出品、母校での講演、海外での子供向けワークショップなど、レゴを通じた社会貢献活動が評価され、大学院修士課程1年時には東京大学総長賞を受賞しました。

そして2011年7月、世界で13人目、そして日本人として初めて、レゴ社から「レゴ認定プロビルダー（LEGO Certified Professional）」に選ばれます。これは、レゴ社が認めた世界最高レベルの技術を持つ一般人に対し与えられる称号であり、この認定によってレゴブロックのブランド名を公式に使用し、プロフェッショナルとして多様なビジネスや活動を展開することが可能となりました。

2012年3月に東京大学大学院修士課程を修了した後、新日鐵住金（現：日本製鉄）に入社し、君津製鐵所に配属されました。会社勤務を続けながらもレゴ活動は継続。社業に関連した鉄鉱石運搬船のレゴ制作や、地域のイベント「ふれあいレゴワールド」の企画などに携わる一方、個人としても依頼による大型オブジェ制作やワークショップ開催を行いました。

2ced941186dfa95b9c027f1e5a15091a2015年3月には、レゴブロックの組み替えレシピアプリ『PlusL』のプロデュースを手掛けました。レゴ制作を本業としたいという思いが強まり、同年、新日鐵住金を退社。4月には自身の活動拠点となる「三井ブリックスタジオ」を設立し、プロビルダーとして本格的に独立しました。現在は、様々な企業や個人からの依頼を受けて作品を制作するほか、子供たちを対象としたワークショップなどを精力的に行っています。

制作へのこだわり

三井氏の制作スタイルは、特殊なパーツを多用するのではなく、基本的なレゴブロックのみを用いることに強いこだわりを持っています。基本ブロックだけでいかに実物を忠実に、そして滑らかな曲線を含めて再現できるかを追求するため、結果的に作品の規模が大きくなる傾向があります。制作にあたっては、パソコンを用いた設計ソフトは使わず、大まかなスケッチを基に、ほとんどを手作業で行います。これは、自身の解釈を反映させたオリジナリティのある作品を生み出すためであり、海外のビルダーに多い分業制も採りません。

また、完成した作品に対する執着は少なく、戦艦大和など数点を除いて、ほとんどの作品は解体し、次の制作のためにブロックを再利用しています。本人は「壊すことで創造力が鍛えられる」「別のものに生まれ変わる過程が楽しい」と語っており、このプロセスも制作活動の一部となっています。完全なオリジナル作品よりも、与えられたテーマや既存の建造物、キャラクターなどをレゴで再現することを得意としています。

主な実績と作品

レゴビルダーとしての主な実績には、TVチャンピオンでの準優勝、MOCpages.comでの「MOC Of The Year」受賞、東京大学総長賞、そして日本人初のレゴ認定プロビルダー認定などが挙げられます。メディアへの露出も多く、『マツコの知らない世界』や『探検バクモン』といったテレビ番組に出演し、レゴの魅力や自身の活動を紹介してきました。また、レゴマスターズ JAPANの審査員を務めるなど、テレビ番組を通じてレゴの普及にも貢献しています。

代表的な作品としては、初期の大型作品であるサターンV型ロケットや等身大ドラえもん、東大関連の建造物（安田講堂、赤門）、国際的に評価された戦艦大和や宇宙戦艦ヤマト、そして企業やイベントのために制作した国会議事堂、ピサの斜塔、モアイ像、鉄鉱石運搬船、伊藤若冲の屏風、アンリ・ルソーの絵画を再現した作品、大規模なレゴシティジオラマなど、多岐にわたります。これらの作品は、基本ブロックのみで構成されているとは思えないほどの精密さや、対象物の特徴を見事に捉えた表現力によって、見る者を驚かせ続けています。

著書に『空間的思考法』があり、レゴ制作を通じて培われた思考法についても発信しています。DVD作品もリリースされており、レゴ制作の楽しさや技術を紹介しています。

三井淳平氏は、レゴブロックという素材の可能性を追求し続け、教育、アート、エンターテイメントなど様々な分野で活躍する、日本のレゴ界を牽引する存在です。

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