安田講堂

東京大学講堂(安田講堂



東京大学本郷キャンパスに位置する東京大学講堂通称「安田講堂」は、その美しい外観と歴史的背景から、大学のシンボルとして広く知られています。約7,000平方メートルの面積を誇り、1,144人を収容できる大講堂は、卒業式や入学式といった重要な式典の舞台となっています。

歴史



安田講堂建設は、安田財閥の創始者である安田善次郎からの匿名寄付によって実現しました。当初は匿名でしたが、安田の死後、その寄付が明らかになり、彼の功績を称えて「安田講堂」と呼ばれるようになりました。安田は、天皇行幸の際に使用する正式な便殿がないことを憂慮し、大講堂と便殿の建設資金として100万円を寄付しました。

設計は、東京大学建築学科の内田祥三が基本設計を行い、弟子の岸田日出刀が担当しました。内田はケンブリッジ大学の門塔に着想を得たと言われていますが、力強いデザインは独特のものです。意匠と構造については、伊東忠太佐野利器が協議に加わり、壁面や音響については、姉崎正治、瀧精一、坂静雄らが協力しました。

1921年に着工されましたが、関東大震災により工事が中断しました。その後、1925年7月6日に竣工しました。震災後に建てられた学内の建築物が茶色のスクラッチタイルで統一されているのに対し、安田講堂は理学部旧1号館と同じ赤レンガを使用しているのが特徴です。

1968年の東大紛争では、全学共闘会議によって占拠され、機動隊によって強制排除されました(東大安田[[講堂事件]])。その後、長期間にわたり荒廃した状態でしたが、旧安田財閥ゆかりの企業からの寄付により、1988年から1994年にかけて改修工事が行われ、再び利用されるようになりました。

1990年の改修を機に、東大の学生団体による演奏会などにも使用されるようになりました。1991年からは、卒業式と学位記授与式が再び安田講堂で行われるようになりましたが、収容人数の関係から、現在は文系学部と理系学部で時間帯を分けて開催されています。また、保護者などは近隣の施設でライブ中継を視聴する形となっています。

2013年度から2014年度にかけては、耐震補強を含む全面改修が行われました。そのため、一時的に卒業式有明コロシアムで開催されていましたが、改修完了後、2015年から再び安田講堂で開催されるようになりました。2021年6月には、2020年入学の学生に対する「入学歓迎式典」が執り行われました。

1996年12月20日には、国の登録有形文化財に登録されました。

施設



安田講堂は、正門を入ってすぐの銀杏並木を軸線とした正面に位置し、東大のシンボルとなっています。内田の基本設計を基に、岸田日出刀が大幅な修正を加えました。敷地が急峻な崖下にあるため、崖の高低差を利用し、大講堂は崖上の3、4階部分に、1、2階部分は崖下に配置されました。

建物の外観は、ゴシック様式を基調とした垂直性を強調したデザインが特徴です。壁面にはピナクルやバットレスが配され、上昇感を与えるデザインとなっています。正面中央には、高さ約30メートルのゴシック様式の塔がそびえ立っています。また、エントランスにはポルティコが設けられ、典型的なゴシック建築の特徴を示しています。

3階と4階には大講堂があり、以前は大学の本部事務棟として使用され、総長室もこの建物にありました。現在は、1階部分に学生課や保健センターがあります。

東大紛争後の安田講堂



東大紛争における占拠と機動隊との衝突により、講堂内部には投石の跡や落書きが残りました。その後、改修前までは一部施設が残存していましたが、大講堂前の広場には中庭が造られ、地下には大学生協が運営する食堂が設置されました。

主な改修工事



安田講堂は、これまで幾度かの改修工事が行われています。

補工工事 (1927-1928)関東大震災以前の設計に対する補強として、主に1、2階の壁を追加する工事が行われました。
各所模様替修繕工事 (1964-1965):竣工から約40年が経過し、内装の更新や部屋の配置変更が行われました。
昭和の大改修 (1970-1971):東大紛争後の修復工事が行われました。大理石製の階段や建具が更新されました。
平成の大改修 (1989-1990)講堂として利用するための改修工事が行われました。
* 耐震改修工事 (2013-2014):東日本大震災による被害をきっかけに、耐震・防災機能強化、創建時の形への復元、バリアフリー化が行われました。鉄筋コンクリート耐震壁が設置され、天井材やガラスも変更されました。また、壁画の修復や音響特性の改善も行われました。

まとめ



安田講堂は、東京大学シンボルとしてだけでなく、日本の近代建築を代表する重要な建造物です。その歴史と建築的価値は、多くの人々に愛され続けています。

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