三江線

三江線：江の川に沿って走ったローカル線の軌跡

島根県江津市と広島県三次市を結んでいた三江線は、2018年4月1日に全線廃止となりました。全長108.1kmのこの路線は、中国地方を代表する大河・江の川に沿って走り、多くの地域住民の生活を支えてきました。しかし、モータリゼーションの進展や人口減少など、様々な要因が重なり、最終的には廃止という決断に至りました。本記事では、三江線の歴史、廃止に至る経緯、そして廃線後の状況について、詳細に解説します。

三江線の歴史：開通までの道のりと厳しい現実

三江線の建設は1926年に着工。三次駅と江津駅の頭文字を取って命名されたこの路線は、江の川沿いの狭い平地を縫うように建設されました。当初はトンネルで江の川の蛇行をショートカットする計画もありましたが、地元の反対運動により断念。結果、全長108.1km（直線距離は約60km）という、決して効率的とは言えないルートとなりました。

1975年の全線開通時には、すでに地域間移動は自動車が主流となっており、三江線は最初から利用客が少なく苦戦を強いられます。全通後も、優等列車は運行されず、地域住民の生活路線としての役割が主でした。

廃止に至った経緯：避けられなかった選択

利用客の減少は、沿線人口の減少、少子高齢化、そしてマイカー利用の増加が主な要因です。スクールバスの利便性向上も、三江線の利用者減少に拍車をかけました。

JR西日本は、何度も三江線の存廃問題に直面します。国鉄分割民営化の際にも廃止候補に挙がりましたが、代替道路が未整備だったため存続が決定。しかし、2008年度の1日平均利用客はわずか約370人。JR西日本の全路線の中でも最低レベルの輸送密度にまで落ち込み、廃止の議論が再燃しました。

2015年、JR西日本は正式に廃止に向けて検討を開始。2016年には沿線自治体も廃止を受け入れ、2018年3月31日をもって旅客営業を終了しました。

廃線後の状況：代替交通と鉄道施設の活用

三江線の廃止後、代替交通としてバス路線が整備されました。しかし、三江線の蛇行した線形とは異なり、バス路線は直線的なルートを採用。そのため、全ての駅をカバーするわけではなく、既存路線と合わせて18路線に細分化されました。バスの乗り入れが困難な駅においては、デマンドタクシーが導入されています。

鉄道施設については、JR西日本から沿線自治体に無償譲渡。駅舎などの再活用が進められていますが、維持管理の負担から、全てが再利用されているわけではありません。

三江線の魅力：秘境駅、豪雨災害、そして数々の臨時列車

三江線には、山間部に位置する秘境駅や、独特な構造の駅など、多くの見どころがありました。また、山間部を走る路線という特性から、度々豪雨災害に見舞われ、その度に復旧作業が行われていました。

三江線には、夏の海水浴シーズンに運行されていた快速「波子ビーチ」や、浜田と広島を結んでいた急行「江の川」、SLを使用した「SL江の川」など、様々な臨時列車も運行されていました。これらの列車は、多くの鉄道ファンを魅了し、三江線の魅力を全国に広めました。

廃線跡地の活用：鉄道公園とレールマウンテンバイク

廃止後、一部の駅周辺は鉄道公園として整備され、観光資源として活用されています。特に、NPO法人江の川鐵道が整備を進めている宇都井駅周辺は、トロッコ列車の運行などを通して、多くの人々を楽しませています。また、三次市では、旧尾関山駅周辺でレールマウンテンバイクが運行開始されています。

まとめ：三江線の記憶

三江線は、過疎化やモータリゼーションの進展といった時代の流れに抗うことができず、廃止という運命を辿りました。しかし、その歴史や風景、そして人々の記憶は、これからも語り継がれていくでしょう。三江線は、ローカル線の盛衰を象徴する存在として、私たちに多くの教訓を残しました。三江線の歴史を振り返ることで、地域の活性化や公共交通のあり方について改めて考える機会を得ることができるのではないでしょうか。

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