不空成就如来

不空成就如来について

不空成就如来（ふくうじょうじゅにょらい）、サンスクリットではアモーガシッディ（अमोघसिद्धि [amoghasiddhi]）と呼ばれ、大乗仏教において崇拝される重要な如来の一つです。この如来は、特に密教における金剛界五仏の一尊として位置づけられており、金剛界曼荼羅の中では大日如来の北方に描かれています。

如来の特徴

不空成就如来は、悟りの境地の一つである「成所作智（じょうしょさち）」を象徴しています。この成所作智は、物事にとらわれずに実践を行うことを意味しており、原語の「アモーガ」は「空（むな）しからず」という意義を持っています。この表現は、不空成就如来がすべてを実現する力を持っていることを示しています。

三昧耶形と印相

不空成就如来の三昧耶形は羯磨金剛（かつまこんごう）であり、十字に組み合わされた三鈷金剛杵が特徴的です。種子（種子字）は「अः（アク、aḥ）」で表されます。印相としては、左手を腹前で衣を掴み、右手は胸の高さに上げて手のひらを前に向けた施無畏印（せむいいん）を結んでいます。この姿勢は、信者や生きとし生ける者に対する恐れを取り除く意味を持っています。

存在意義と信仰

不空成就如来は、胎蔵界の北方において天鼓雷音如来（てんくらいおんにょらい）と同一視されることもあります。また、しばしば釈迦如来と同一視されることもあるため、仏教における複雑な信仰体系の中での位置づけが見えてきます。

日本においては、不空成就如来の彫像は特に五仏（五智如来）の一として制作されることが多く、単独での造像や信仰は非常に少ないのが現状です。そのため、不空成就如来に対する知識や理解は、他の如来と共に学ばれることが一般的です。

真言と修行

不空成就如来には特定の真言があります。「オン・アボキャ・シツデイ・アク（Oṃ amoghasiddhi aḥ）」と唱えることで、この如来の力を求め、願いを叶えるための助けを得られるとされています。この真言は、仏教徒が精神修行の中で日常的に唱え、如来の思想を体現するための重要な要素となっています。

こうした不空成就如来への信仰や理解は、仏教に親しむ人々の精神的な支えとなり、多くの人々に受け入れられているのです。

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