世界の医療団

世界の医療団（Médecins du Monde, MDM）とは

世界の医療団は、フランス人医師ベルナール・クシュネルによって1980年に設立された国際的な医療NGOです。フランス語では「Médecins du Monde」、英語では「Doctors of the World」と呼ばれています。世界中の最も弱い立場に置かれた人々への医療支援を主な活動としています。

設立の背景

1970年代末、ベトナムからのボートピープル問題が深刻化しました。当時、クシュネルが設立に関わった「国境なき医師団」は、領海侵犯の恐れからボートピープルの救助に躊躇しました。これに対し、クシュネルは友人らと大型船「イル・ド・リュミエール（光の島）」号をチャーターし、自ら救助活動に向かいました。この出来事が、人道医療支援を目的とする「世界の医療団」設立のきっかけとなりました。

使命と活動

世界の医療団の活動は、「治療する」ことと「証言する」ことの二つを柱としています。

治療する: 国籍、民族、宗教、思想、人種に関わらず、最も弱い立場にある人々を救うことを目指しています。自然災害、武力紛争、政治的抑圧の犠牲者、難民、避難民、少数民族、ストリートチルドレンなど、医療から疎外された人々を対象としています。
証言する: 医療活動を通じて、人権侵害や医療へのアクセスを妨げる要因を告発します。独立した立場から、医療を超えた「証言」を通じて、社会に訴えかけ、より効果的な支援活動を目指しています。

支援プログラム

世界の医療団は、緊急プログラム、復旧プログラム、長期開発プログラムの3つの柱で支援活動を行っています。

緊急プログラム

自然災害や武力紛争が発生した際、被災者の救出、医療支援、医薬品や飲料水の供給、予防接種などを迅速に行います。発生から24時間～72時間以内に救援隊を派遣し、必要最低限の生活環境を整備することを目的とします。

復旧プログラム

緊急事態が沈静化した後、6ヶ月～3年の計画で実施されるプログラムです。被災者の身体と心の回復、保健医療サービスの再建、医療施設や物資の供給などを行います。

長期開発プログラム

地域社会の自立を目指し、6ヶ月～3年かけて、持続可能な医療を提供します。現地のパートナーやコミュニティと協力し、保健医療サービスの向上、医療従事者の育成、予防啓発活動などに取り組みます。

日本における活動

1995年の阪神・淡路大震災では、いち早く日本に拠点を設置し、緊急支援チームを派遣しました。同年3月には日本事務局が設立され、医療ボランティアの募集や派遣、証言活動、募金活動を開始しました。

スマイル作戦

顔面や身体に損傷を負った子どもたちを対象とした修復形成外科プロジェクトです。日本からも毎年、医療ボランティアが派遣され、手術などの治療を行っています。

ニココロプロジェクト

東日本大震災の被災地である岩手県大槌町で、精神科医を中心としたチームが「こころのケア」を中心とした医療支援を長期に渡って展開しています。薬の処方に加え、被災者自身でできる自己緩和法の伝授にも力を入れています。

東京プロジェクト

東京都豊島区池袋で、ホームレス状態にある人々を対象とした支援プロジェクトです。NPO法人と協力し、日中活動や当事者研究などのプログラムを通じて、路上からの脱却と地域生活への移行を支援しています。

組織と財政

世界の医療団は、理事会、運営委員会、考察グループ、国際代表団、海外支部によって構成されています。財政の透明性を重視し、民間からの寄付金収入を中心に活動しています。

ボランティア募集

世界の医療団では、世界各地の医療援助プロジェクトに参加する医療従事者を中心としたボランティアを常時募集しています。

その他の情報

国際ネットワーク: 16ヶ国に国際ネットワークを持ち、約90ヶ国で活動を展開しています。
年間予算: 約120億円
スタッフ: 約3000人のボランティア、380人の海外派遣スタッフ、2000人の現地スタッフ、520人の常勤スタッフ

関連団体

国境なき医師団
* ACジャパン（過去に支援キャンペーンを実施）


世界の医療団は、世界中の困難な状況にある人々への医療支援を通して、人々の健康と尊厳を守る活動を続けています。

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