久昌院

久昌院の生涯と家系

久昌院（きゅうしょういん）は、慶長9年（1604年）に生まれ、寛文元年11月14日（1662年1月4日）に亡くなった日本の歴史的人物です。常陸水戸藩主・徳川頼房の側室として知られる彼女の本名は久子で、実家は佐野藩士の家系に属しました。母親は伊藤七郎兵衛の娘で、養心院と呼ばれました。久昌院は母親の影響で水戸藩に出入りしていたところ、頼房の寵愛を受けることとなり、彼の長男である頼重を妊娠しました。そして、次第に側室として位置づけられ、高瀬局と名乗るようになりました。

徳川頼房との間に生まれた子供は、元和8年（1622年）の頼重と、寛永5年（1628年）の光圀です。彼女は出産時、頼房から堕胎を命じられたものの、家臣である三木之次と頼房の乳母である武佐によってかくまわれ、無事出産を果たしました。頼重は江戸麹町の三木家別邸で、光圀は水戸城下の三木邸にて出産されました。

久昌院は生涯を水戸藩に捧げ、寛文元年（1661年）10月に病に倒れ、11月14日に小石川藩邸にて58歳で亡くなりました。法号は久昌院靖定大姉、諡号は靖定夫人であります。彼女の墓所は初め水戸城下の経王寺にありましたが、後に水戸徳川家墓所の瑞龍山へ移されました。久昌院は正室ではなかったため、頼房の墓の隣にあたる位置に葬られています。

久昌院の菩提を弔うために、徳川光圀は1677年に久昌寺を建立しました。この寺は日蓮宗に属しており、また、頼重は香川県高松市に広昌寺を建立し、久昌院の供養を行っています。久昌院自身も生前に日蓮宗の信者であったため、関連する寺は同様の宗派となっております。

彼女の性格についての記録は、光圀が書いた「靖定夫人を追福せる諷誦文」に記されており、貞淑で温和な性質であったとされています。彼女は家族や使用人に対しても配慮をもって接し、静かな女性であったとほのめかされています。

家系の背景

久昌院は宇多源氏の子孫である谷氏の出身ですが、生家の谷家は本来藤原氏を名乗っていました。彼女の家紋は藤丸で、先祖は近江国に住んでいたとされます。久昌院の祖父は谷重春（重治）と呼ばれ、六角義賢に仕えていました。父の重則は9歳の時に小吉郎（後の佐野信吉）に仕官し、その後、信吉に従って関東に下りましたが、後に改易されたため、鳥居忠政に仕官して岩城に居住していました。

重則は伊藤七郎兵衛（養心院）の娘と結婚し、4男2女をもうけました。その中で久昌院は長女にあたります。兄弟たちもまた水戸藩や高松藩で重職に就いていたり、仕官先での地位を築いたりしました。特に長男の重祐は高松藩で長く大老や家老を務め、その子孫も同様の道を歩んでいます。

久昌院に登場した作品

久昌院の登場する作品としては、テレビ東京の『天下の副将軍水戸光圀 徳川御三家の激闘』（1992年）や、NHK大河ドラマ『葵 徳川三代』（石川葉子）などがあり、彼女の存在は歴史においても重要視されています。彼女の生涯と家族が織りなす物語は、日本の歴史の一端を成す貴重なものであり、今後とも語り継がれていくことでしょう。

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