亀屋万年堂

株式会社 亀屋万年堂

株式会社亀屋万年堂（かめやまんねんどう）は、神奈川県横浜市都筑区に本社を構える、特色ある菓子を専門とする企業です。現在はシャトレーゼホールディングスの傘下にあり、その完全子会社として事業を展開しています。特に、長年にわたり多くの人々に愛され続ける「ナボナ」をはじめとする独創的な菓子で知られています。

歴史

亀屋万年堂の歩みは、1938年に引地末治氏が創業したことに始まります。第二次世界大戦中の1941年から1945年にかけては一時休業を余儀なくされましたが、終戦後の1946年に営業を再開。そして1948年に合資会社として正式に設立されました。

同社の顔とも言える代表的な菓子「ナボナ」が誕生したのは1963年です。和菓子職人であった創業者、引地末治氏は、欧州旅行での体験から大きな影響を受けました。現地の菓子文化に触れたことで、「和菓子の感性を活かしながらも、洋菓子の楽しさを持ち合わせた商品を生み出したい」という強い思いを抱き、その熱意からナボナは開発されました。その名は、イタリアのローマにある美しい「ナヴォーナ広場」に由来しています。

ナボナの人気を不動のものとしたのが、1967年に当時読売巨人軍のスター選手だった王貞治氏を起用したテレビコマーシャルです。王氏の「ナボナはお菓子のホームラン王です！」というキャッチフレーズは瞬く間に浸透し、ナボナは爆発的な売上を記録しました。この成功を受け、工場増設や1974年の本社移転など、会社は大きな飛躍を遂げます。その後、餡をカステラで巻いた和風ミニロールケーキ「森の詩」という新商品も登場し、王氏のCMに「森の詩もよろしく」というフレーズが加わることで、こちらも人気を博しました。なお、「森の詩」は現在では製造を終了しています。

この頃、漫画家の赤塚不二夫氏も亀屋万年堂を気に入り、自身の漫画作品の中で「好きな食べ物は『亀屋万年堂』の『ナボナ』です。『森の詩』もよろしく。」と紹介するなど、文化的にも影響を与えていました。

1979年には組織を株式会社に改め、これを機に亀屋万年堂製菓やカルチェラタンといった関連会社を設立し、販売網の強化を図りました（関連会社の体制は後に再編されています）。2007年からは、一部店舗でクレジットカードでの支払いが可能となり、利便性が向上しました。

2004年、末治氏の長男である引地良一氏の後を継ぎ、社長に就任したのは国松彰氏です（2011年に会長就任）。国松氏は王貞治氏の巨人時代の先輩であり、選手として活躍後、コーチなども歴任した経歴の持ち主です。国松氏が末治氏の娘（良一氏の姉妹）と結婚したことが、王氏のCM起用や国松氏の役員就任につながる縁となったとされています。

主要店舗の一つである自由が丘総本店は、建物の老朽化に伴う改築工事を経て、2015年4月16日に新たな装いでオープンしました。

大きな転機が訪れたのは2021年です。同年1月15日、シャトレーゼホールディングスが亀屋万年堂の全株式を取得し、完全にその傘下に入りました。これにより、同年10月には創業家出身者以外で初めて、シャトレーゼから出向した広瀬好文氏が社長に就任し、経営体制が刷新されました。

事業所

亀屋万年堂は、主に東京都と神奈川県に直営の販売店舗を展開しています（店舗数は変動します）。「ナボナ」をはじめとする主力商品の製造は、神奈川県横浜市都筑区にある横浜工場で行われています。この横浜工場には、現在、本社機能も集約されています。

関連事業等

過去には、亀屋万年堂の一番弟子が暖簾分けを受けて横浜市港北区大倉山駅前に「鶴屋千年堂」という姉妹店を営んでいましたが、1998年の火災により焼失し、閉店しました。大倉山近隣の大曽根にも支店がありましたが、こちらも既に閉店しています。また、横浜市営地下鉄ブルーライン新羽駅近くにあった亀屋万年堂の支店は、かつて鶴屋千年堂の関連店として、火災後に支援を行っていた時期があったとされています。

菓子事業とは別に、「鶴屋千年堂株式会社」を名乗る企業が2016年頃に存在し、化粧品のインターネット通販を行っていました。この会社は2009年設立とされ、東京都新宿区に住所がありましたが、菓子店の鶴屋千年堂や亀屋万年堂の関係者との直接的な人的繋がりなどの詳細は不明であり、2019年までには消滅していたようです。主に「水精ロゼ」というブランドの化粧品を販売していました。

また、亀屋万年堂や関連店の名前は、メディア作品にも登場しています。例えば、1979年のアニメ映画『がんばれ!!タブチくん！』には「鶴屋千年堂のボナボ」、1987年から1991年に連載された漫画『燃える!お兄さん』には「鶴屋千年堂のタボナ」という形で、その名を思わせるパロディ的なセリフが見られます。

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