井仁の棚田

井仁の棚田の魅力と歴史

広島県山県郡安芸太田町中筒賀に位置する井仁の棚田は、豊かな自然美と深い歴史的背景を持つ魅力的な風景スポットです。この棚田は、広島県が誇る「日本の棚田百選」に選ばれており、また2000年には「広島県環境づくり大賞」を受賞し、2015年にはCNNが選定した「Japan's 31 most beautiful places」にも名を連ねています。

歴史的な背景

井仁の棚田は、戦国時代以前の文献が少ないため、形成の過程については推測が多いのが現状です。平安時代末期には、現在の井仁地域は厳島神社の荘園「大田郷」の一部として存在していました。この頃、栗栖氏によって開墾が始められ、さらに室町時代の初期に集落が形成されたと考えられています。

石垣に関しては、戦国時代以降の築城と関連しているため、この棚田の石積の一部は戦国時代に遡るとされています。特に、戦国時代末期から安土桃山時代にかけてこの地域を支配した吉川氏が、築城のために動員した住民らによって技術が持ち帰られ、棚田が形成されたと考えられています。1618年には、すでに現在の姿に近い棚田が完成していたとされます。

保全活動と地域の取り組み

近代になってからの井仁地域は、多くの歴史的出来事を経てきました。1998年には、地域活性化のための棚田保全策が提案され、1999年には現地の棚田祭りが始まります。そして、その活動は地域住民と自治体の協力によって進められ、いつしか「桃源の里井仁」としてのブランドを確立しました。この活動は広島都市圏に対してアピールし、都市農村の交流を促進しました。

さらに、井仁棚田体験会では、田植えや稲刈りの体験を通じて多くの人々が地域に訪れ、交流を深める場となっています。参加者は毎年100人前後にのぼり、地域文化や伝統農法を学ぶ貴重な機会となっています。

自然の美しさと環境

井仁の棚田は、標高500mから550mの地点に位置し、周囲は急峻な山々に囲まれたすり鉢状の盆地にあります。このため、棚田の平均勾配は1/6で、合計12.7haの農地の中で、棚田部分は約7.9ha、324枚が設けられています。

井仁棚田の特色の一つは、「添水」と呼ばれる水車が存在することです。これにより、高い位置に水を供給することが可能となっています。また、棚田を支える石垣は花崗岩でほぼ垂直に積まれており、歴史的な技術が感じられます。

アクセスとイベント

井仁の棚田は、交通の便も良好で、戸河内ICや加計SICから車で約10分の距離にあります。バスを利用する場合は、広電バス三段峡線の「戸河内ICバスセンター」からタクシーで約10分というアクセスです。また、展望台やトイレ、駐車場などの見学用施設も整備されています。

毎年、6月には田植え体験、10月には稲刈り体験といったイベントが行われており、訪れる人々に地域の風土や文化を身近に感じる機会が提供されています。

まとめ

こうした歴史的背景や地域に根ざした保全活動が根付く井仁の棚田は、ただの観光名所ではなく、地域の人々の生活と深く結びついた重要な空間です。美しい風景が広がる井仁の棚田で、ぜひその魅力を体感してみてはいかがでしょうか。

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