亜ヒ酸

亜ヒ酸：性質、反応、そして歴史的な毒性

亜[ヒ酸]]は、化学式As(OH)₃で表される無機化合物です。水溶液中で生成するため、純粋な物質としては単離できませんが、その存在と重要性は広く認識されています。一般的には、無水物である三酸化二ヒ素]を亜[[ヒ酸と呼ぶことが多く、本稿でもこの慣習に従います。

亜ヒ酸の性質

亜[ヒ酸]]は、ヒ素原子に3つのヒドロキシ基(-OH)が結合した三角錐形の分子構造を有しています。これは、リンの類似化合物である亜リン酸(H₃PO₃)とは対照的です。亜リン酸はホスホン酸]₂)へと平衡が偏っているのに対し、亜[[ヒ酸はAs(OH)₃の形を保ちます。このAsとPの性質の違いは、主族元素において軽い元素ほど高い酸化状態が安定であるという一般的な傾向を反映しています。

亜ヒ酸の反応

亜ヒ酸は、水中における三酸化二ヒ素の穏やかな水和反応によって生成します。この反応は以下のように表されます。

As₂O₃ + 3H₂O → 2H₃AsO₃

塩基を添加すると、亜ヒ酸は段階的に脱プロトン化し、以下の陰イオンとなります。

[AsO(OH)₂]⁻
[AsO₂(OH)]²⁻
[AsO₃]³⁻

最初の解離定数(pKa)は約9.2です。三酸化二ヒ素水溶液の反応は、亜ヒ酸とその共役塩基の平衡によって支配されます。

亜ヒ酸の毒性

ヒ素を含む化合物は一般的に強い毒性を持ち、発がん性も有することが知られています。その中でも三酸化二ヒ素は、除草剤、殺虫剤、殺鼠剤などとして利用されてきた歴史があります。亜ヒ酸は無味無臭であるため、古くから毒殺に使用されてきた経緯があり、多くの悲劇的な事件を引き起こしてきました。

日本では、1938年に福岡県で亜ヒ酸混入の焼餅による集団食中毒事件が発生し、15名以上が死亡するなど、深刻な被害をもたらしました。さらに1998年には和歌山県で発生した和歌山[[毒物カレー事件]]では、カレーに亜ヒ酸が混入され、4名が死亡するという痛ましい事件となりました。これらの事件は、亜ヒ酸の危険性を改めて認識させるものです。

まとめ

亜ヒ酸は、その性質、反応、そして歴史的な毒性から、化学的にも社会的に重要な化合物です。水溶液中での挙動や、人体への影響を理解することは、安全な環境を維持するために不可欠です。将来、亜ヒ酸に関する研究がさらに進展し、その危険性をより的確に評価し、安全対策を強化することに繋がることが期待されます。

参考文献

“Arsenic trioxide”. January 29, 2006閲覧。
JISK8044:2017 三酸化二ヒ素 (試薬)

関連事項

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毒の歴史
土呂久砒素公害
* Case Studies in Environmental Medicine - Arsenic Toxicity

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