人工透析

人工透析とは

人工透析（じんこうとうせき）は、腎不全により腎臓の機能が低下した患者に行う治療法の一つで、腎臓機能を人工的に補完することを目的とします。日本では、腎移植の認知があまり広まっていないため、依然として多くの透析患者が存在し、2017年には約32万人に達しています。

腎不全と透析の背景

腎不全に至ると、尿毒症を防ぐためには、血液中の老廃物や電解質の調整及び水分量の維持が必要です。これらは腎臓が本来行うべきですが、機能が低下するとこの状態を補うための外部的処置が求められます。透析はこうした目的に従って、身体の代謝産物や不要物を除去する手段として利用されます。

透析の種類

人工透析には主に2つの方法、腹膜透析（PD）および血液透析（HD）が存在します。腹膜透析は、患者自身の腹膜を利用して透析を行う方法で、患者の日常生活に柔軟性を持たせるメリットがあります。一方、血液透析は血液を体外に出し、機械で処理した後に再び体内に戻す方法で、通常は週に数回の通院が必要とされます。

透析治療の選択基準

透析の開始基準や治療法の選択は、患者の病状や腎機能に基づいて決定されます。一般的に慢性腎不全が進行し、クレアチニンクリアランスが10 mL/minを切った場合には透析が検討され、また、腎機能の指標としてGFR（糸球体濾過率）がより重要視されます。

合併症や予後管理

透析治療は、血液透析や腹膜透析がそれぞれ持つ合併症リスクを含め、治療に伴う影響を十分に理解した上で行う必要があります。心血管疾患、骨代謝異常、感染症などの合併症が多く、患者の日常生活に影響を及ぼすことから、定期的なフォローアップが重要です。また、透析により生活の質（QOL）の維持が求められるため、患者の希望や生活スタイルに応じた治療法の選定が必要です。

日本における透析事情

日本では透析治療が普及していますが、腎移植に関する理解は低いため、多くの患者が透析治療を受け続けなければならない状態が続いています。透析患者の多くは、長期的には合併症リスクが高まる可能性があるため、腎移植の重要性やその選択肢についても考慮されることが望まれます。

透析治療は多くの患者にとって必要不可欠なものですが、その実施にあたっては医療側と患者が共に情報を共有し、良好な治療環境を整えることが重要です。

もう一度検索