今成泰章

今成 泰章（いまなり やすあき）

日本のプロ野球界でスカウトとして長年にわたり活躍した人物。1955年7月14日に東京都で生まれ、2022年3月2日に逝去した。選手としてのプロ野球経験はなかったが、阪神タイガースと北海道日本ハムファイターズという2球団で、多くの才能を見出し、チーム強化に貢献した。

学生時代の野球経験

堀越高校時代は内野手（遊撃手、三塁手）としてプレー。駒澤大学に進学し、硬式野球部では捕手を務めた。大学在学中には、チームが全日本大学野球選手権大会で2度の優勝を飾る栄光を経験している。当時のチームには、後に阪神タイガースで同僚となる左腕投手、藤原仁氏が同期として在籍していた。しかし、故障のためプロ野球選手としての道を断念せざるを得なかった。

阪神タイガースでの功績

大学卒業後の1978年、新卒採用で阪神タイガースにスカウトとして入団した。スカウトとして最初の大きな仕事の一つは、大学時代の同期である藤原氏を当時の制度下でドラフト外入団させたことだった。その後も、和田豊、平田勝男、中西清起、関川浩一、桧山進次郎、今岡誠といった、後にチームの主力や功労者となる選手たちの獲得に尽力した。その手腕を買われ、1999年にはチーフスカウトに就任したが、スカウティングに関する自身の考え方と当時の球団経営陣の方針が対立。この意見の相違から、2002年8月末に自ら退職を選んだ。

球界を離れて、そして復帰

阪神退職後、2002年9月からは埼玉県富士見市で「さんきゅう」という居酒屋を経営していた。しかし、球界への熱意は冷めることはなく、旧知のスカウトからの働きかけもあり、翌2003年には日本ハムファイターズ（後の北海道日本ハムファイターズ）の関東・東北地区担当スカウトとしてプロ野球界に復帰した。

日本ハムでの新たな活躍

日本ハム復帰後は、再びその卓越したスカウト手腕を発揮。須永英輝、押本健彦、ダルビッシュ有、大野奨太、杉谷拳士、中村勝、松本剛、上沢直之、大谷翔平、鍵谷陽平、太田賢吾、加藤貴之、野村佑希など、後にチームの中心選手となる多くの若手選手の入団交渉を担当した。特に、高校時代から注目され、メジャーリーグ挑戦も視野に入れていたダルビッシュ有や大谷翔平といった「獲得は困難だろう」と見られていた選手たちを、粘り強い交渉によって入団へと導いたことは特筆されるべき功績である。

家族との関わり

今成氏には二人の息子がおり、長男の今成優太氏は埼玉県富士見市議会議員を務めている。次男の今成亮太氏は、浦和学院高校で野球を続け、2005年に高校生ドラフト4巡目で今成氏が所属する日本ハムに入団した。亮太氏も入団当時は捕手だったが、2012年シーズン途中に阪神タイガースへトレード移籍。移籍後に打撃が開花し、内野手や外野手としても活躍。2018年に現役を引退した後、2019年から2021年まで父と同じく阪神の球団職員として活動した。

人物像と晩年

今成氏は、獲得が難しいとされる選手でも入団に結びつける手腕から、阪神スカウト時代から「マムシの今成」という異名で知られていた。その一方で、スカウト活動と並行して、地域の少年野球チームである水谷フェニックスの第3代代表・総監督や、富士見クラブの総監督を務めるなど、アマチュア野球の指導・普及にも尽力した。

2022年2月には、日本ハムの春季キャンプを視察。自身が担当地区の違いから獲得に関わっていなかったものの、阪神時代から激励を続けていた監督の新庄剛志氏に対し、冗談交じりに「俺が獲った選手を使ってくれないか？」と語りかける場面が報じられるなど、最晩年まで球界との繋がりを持っていた。しかし、その視察後、2月下旬頃に入院。キャンプ終了後の3月2日、劇症型溶血性レンサ球菌感染症のため、66歳という若さで突然この世を去った。高校時代に対戦経験のあるスポーツライターの安倍昌彦氏によると、今成氏は亡くなる数年前に前立腺癌の治療を受けていたという。多くの名選手獲得に貢献したスカウト人生に、突然の幕が下ろされた。

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