仏御前

平安時代の白拍子、仏御前：栄華と儚さの生涯

仏御前は、平安時代末期の『平家物語』に登場する白拍子です。同時代の白拍子、祇王との関わりや、平清盛との関係を通じて、栄華と儚さが織りなす生涯は、多くの伝承や物語を生み出しました。

『平家物語』における仏御前

『平家物語』では、平清盛が祇王を寵愛していたところに、16歳の仏御前が現れ、清盛の前で舞を舞うことを願い出ます。清盛は祇王への配慮から当初はこれを拒否しますが、祇王のとりなしと、仏御前の美しい舞に心を奪われ、祇王を廃し、仏御前を寵愛するようになりました。

祇王は清盛の屋敷を去り、深い悲しみの中、「萌え出づるも枯るるも同じ野辺の草、いずれか秋にあはで果つべき」という歌を書き残します。その後、仏御前は清盛の寵愛を受けますが、世の無常を感じ、出家して尼となります。

ある夜、尼となった仏御前は祇王を訪れます。祇王は仏御前の出家を喜び、過去の恨みを捨てて仏門に励む二人。やがて、祇王の母や妹も加わり、四人で念仏三昧の日々を送ったと伝えられています。

加賀国に伝わる仏御前の伝承

『平家物語』の諸本や語り本系には、仏御前の出身地が加賀国であるという記述があり、加賀国には仏御前に関する多くの伝承が残されています。

加賀国小松市原町（かつては仏原と呼ばれた）には、仏御前の乾漆像が伝えられています。宝永年間に作成された『仏御前事蹟記』によると、仏御前は清盛から贈られた阿弥陀如来像を持ち帰り、仏原で余生を送り、極楽往生を遂げたといいます。

また、『仏御前影像略縁起』には、仏御前の詳細な生涯が記されています。それによると、仏御前は永暦元年（1160年）に原村で生まれ、幼い頃から仏教を深く信仰していたことから「仏御前」と呼ばれていました。承安4年（1174年）に京都へ上京し、白拍子として名を挙げ、清盛の寵愛を受けますが、安元3年/治承元年（1177年）に出家。嵯峨野の往生院に入寺します。しかし、既に清盛の子を身ごもっていたため、故郷の加賀国へ戻り、出産しますが、子供は死産だったとされています。その後、仏御前は治承4年（1180年）に亡くなったと記されています。

一方で、『加能越三州地理志稿』や一部の口承では、仏御前は殺害されたという伝承もあります。

仏御前を題材とした作品

仏御前の生涯は、数々の作品に題材として用いられてきました。映画、テレビドラマ、舞台など、様々な形で仏御前の物語は現代に伝えられています。これらの作品を通じて、仏御前の生涯は再解釈され、新たな魅力を放ち続けています。

まとめ

『平家物語』に登場する白拍子、仏御前の生涯は、華やかな栄華と、世の無常、そして信仰への道を示す物語です。祇王との対比、清盛との関係、そして加賀国に残る数々の伝承は、仏御前という人物像を多角的に理解するための重要な手がかりとなっています。彼女の生涯は、歴史の狭間で生きた女性のドラマとして、現代においても人々の心を捉え続けています。 様々な資料から、仏御前の生涯を探ることは、平安時代末期の社会や文化、そして人間の心の機微を理解することに繋がります。

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