保

保の概要

「保（ほ/ほう）」は、日本の古代から中世にかけて存在した地域の行政単位であり、その意味は時代や地域によって異なっていました。本記事では、保の制度が持つ背景や役割、時代に伴う変遷について詳述します。

古代律令制における保

古代の律令制において、保は最下位の行政単位として位置づけられていました。特に5戸をまとめた「五保（ごほ/ごほう）」がその代表例で、保長がその責任者を務めました。保内の戸は相互に助け合い、治安維持や税の徴収に関して共同で責任を持つことが求められました。この制度は中国の隣保制の影響を受けたとも考えられており、日本の戸令においても規定が設けられていました。

当時の日本では「戸」が必ずしも現在の家庭のように独立して存在していなかったため、5戸を一つの単位とすることは問題を引き起こしました。また、保に属する戸の中で逃げた者があった場合、他の戸はその者を3年間追跡する義務があり、不在時にはその土地を耕して家賃や税金を支払う必要がありました。この制度により、民衆は地域の公民として相互に監視し合い、税を確保する仕組みが形成されました。

平安京における保

平安京では、都城制が導入され、その内部は条坊制に基づいて区画されました。この区画の中で、保は特に重要な位置付けを持ち、坊や町を基に区別されていました。平安京の一保は1坊の4分の1に相当し、保は坊の中央を通る区画だったため、地理的にも重要な要素となっていました。

貞観4年（862年）、保長の制度が導入され、徴税や治安維持の役割を担うこととなりました。しかし、10世紀にはこの制度も形骸化し、地元の有力者が保刀禰と呼ばれる役職に任じられ、実質的な治安維持が行われました。

所領における保の変遷

平安時代の後期、特に11世紀以降になると新しい「保」が所領単位として登場します。これらの保は事実上、地域内での権利を認められ、その名称は地名や人物名に由来していることが多いとされています。古代の保についての記録がいくつか残っているものの、具体的な使用法や影響については完全に明らかではありません。

所領の保では、国衙からの権利を持ち、農地の開発や管理が行われましたが、保司が必ずしも地元の領主とは限らず、有力な寺社の僧侶や官僚が関与していました。そのため、保司は地元系と在京系に分かれ、彼らの権利と責任の違いが存在しました。国保と京保の違いは、国衙との関係における扱い方にあり、前者は国衙に対する従属的な立場が強い一方で、後者は直接官司や権門との関係を重視するものでした。

このように、保は律令制の枠組みの中で発展し、時代と共にその特徴や役割が変化していきました。日本の歴史の中で保が果たした役割は広範囲にわたり、地域社会の構造や治安維持、経済活動に深く関与していたことがわかります。

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