冥王星の衛星

冥王星の衛星

冥王星は、太陽系外縁部に位置する準惑星であり、複数の衛星を持つことが知られています。2022年現在、5つの衛星が確認されており、これは小惑星番号を持つ天体としては最多です。

発見の歴史

1978年、天文学者ジェームズ・クリスティーによって、最初の衛星カロンが発見されました。この発見により、冥王星の明るさにはカロンの明るさも含まれていたため、冥王星自体のサイズが従来の見積もりよりも小さかったことが判明しました。

その後、2005年にはニクスとヒドラ、2011年にはケルベロス、2012年にはステュクスが発見され、冥王星の衛星ファミリーは拡大しました。

各衛星の特徴

カロン：冥王星とカロンは、互いに共通重心の周りを公転する連星系を形成しており、これは太陽系で最大の連星系です。この連星系の特徴は、共通重心が主星である冥王星の地表の外にあることです。

ニクスとヒドラ：これらの衛星は、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で発見されました。ニクスは内側の衛星で、ヒドラは外側の衛星です。英語表記の頭文字「N」と「H」は、冥王星探査機ニュー・ホライズンズに由来します。これらの衛星は、カロンのおよそ2倍から3倍の距離を公転しており、カロンと軌道共鳴に近い状態にあります。

ケルベロスとステュクス：これらの衛星は、ニクスとヒドラの軌道の中間に位置しています。ケルベロスは2011年に、ステュクスは2012年に発見されました。これらの衛星は、カロンと軌道共鳴をしている可能性があり、公転周期はカロン、ステュクス、ニクス、ケルベロス、ヒドラの順に1:3:4:5:6の比率に近いとされています。

衛星の分布

冥王星の衛星の分布は、他の衛星系と比較して独特です。衛星が安定して公転できる範囲（ヒル球）の半径は約600万kmですが、冥王星の衛星は、ヒル球の内側3％の領域に集中しています。これは、他の天体の衛星がヒル球の広い範囲に分布しているのと対照的です。冥王星系の衛星は、非常にコンパクトにまとまっていると言えるでしょう。

過去の環の可能性

冥王星に小さな衛星が発見されたことで、過去には環が存在した可能性が指摘されました。小さな天体の衝突で生じた破片が環を形成することがあるからです。しかし、ハッブル宇宙望遠鏡の詳細な観測結果からは、現在のところ冥王星に環は確認されていません。

一覧表

※カロンの軌道面を0度とした場合

架空の衛星

エドモンド・ハミルトンの小説『キャプテン・フューチャー』シリーズでは、冥王星には「ケルベロス」「カロン」「ステュクス」「ディス」という4つの衛星が存在するとされています。これは、冥王星の衛星が発見される以前に書かれたフィクションであり、作者の創作によるものです。

また、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』にも冥王星の衛星が登場しますが、具体的な名前は言及されていません。

関連事項

(15810) 1994 JR1 - 冥王星の準衛星。

まとめ

冥王星の衛星は、連星系や軌道共鳴、コンパクトな分布など、他の衛星系には見られない特徴を持っています。これらの衛星の研究は、太陽系の形成や進化を解明する上で重要な手がかりとなります。

もう一度検索