剣舞

剣舞とは

剣舞（けんぶ、けんまい、けんばい）は、剣を用いて踊る伝統的な舞踊の一種です。古くから世界各地で多様な形式が見られ、観賞用、祭りの演目、邪気払いの儀式など、様々な目的で踊られてきました。剣を武器として用いるようになった人類の歴史とともに、剣舞は各地で独自の発展を遂げ、それぞれの文化を色濃く反映しています。

武器を持って踊る舞踊は「武舞（Weapon dance）」と呼ばれ、剣舞はその代表的な例です。剣舞は単なる舞踊としてだけでなく、武術的な要素を取り入れたものや、精神的な鍛錬を目的としたものなど、多種多様な側面を持っています。

アジアにおける剣舞

日本

日本では、以下のような多様な剣舞が伝わっています。

鬼剣舞：岩手県北上市周辺に伝わる伝統芸能で、勇壮な舞が特徴です。
剣詩舞：日本舞踊の一種で、剣を用いて詩を表現する優雅な舞です。
剣扇舞：剣と扇子を組み合わせた、独特の舞です。
鹿踊：仙台市以北の東北地方太平洋側に分布し、剣舞と一対で伝わることが多いです。

中国、ベトナム

中国では「剑舞（jian wu）」または「剑器舞（jian qi wu）」と呼ばれます。『山海経』には、盾の舞を神に奉納する儀式や、戦神である刑天が盾と斧を持って舞ったという記述があります。四字熟語の「干戚羽旄（かんせきうぼう）」は武舞と文の舞を示す言葉です。

朝鮮半島

朝鮮半島では「クォンム(劍舞)」と呼ばれ、伝統的な舞踊として継承されています。

インドにおける剣舞

インドでは、「ガッカ」「Paika akhada」「Chholiya」など、地域ごとに特色ある剣舞が見られます。これらの舞踊は、武術的な要素を強く持ち、勇壮な動きが特徴です。

ヨーロッパにおける剣舞

ヨーロッパでも、様々な地域で剣舞が踊られています。

スペインのバスク地方やオランダのフランドル地方など、各地に独自の剣舞が伝承されています。
ドイツのニュルンベルクでは、1350年から剣・鍛冶ギルドによる剣舞が記録されています。
ロシアのコサック人の踊りである「ホパーク」も剣舞の一種として知られています。
古代ギリシャでは「ピュリケー」という武舞が盛んで、特にスパルタでは戦闘訓練として行われていました。

中東における剣舞

中東では、剣舞は「raqs al-saïf」と表記されます。

アラビアでは「アルダ（en）」という剣舞が有名です。
エジプトでは「el ard」という剣舞が踊られています。
トルコ（ブルサ）では「クルチ・カルカン（Kılıç Kalkan）」という剣舞が知られています。
アラブ首長国連邦では「ヨウラ、Al Ayala dance」という銃舞が行われています。

オセアニアにおける剣舞

オセアニアでは、ブーメランを打ち鳴らす踊りや、トンガの民族舞踊「Kailao」など、特徴的な舞踊が見られます。

剣舞と関連する芸能・文化

剣舞は、他の芸能や文化とも密接な関わりを持っています。例えば、以下のようなものが挙げられます。

剣の舞：アラム・ハチャトゥリアン作曲の楽曲で、剣舞をテーマにした音楽です。
観公孫大娘弟子舞剣器行：中国唐代の詩人、杜甫の作品で、剣舞の様子を描写しています。
予祝芸能：農作業や戦の前に祝い、豊作や勝利を願う儀式で、剣舞が用いられることがあります。
タフティーブ：エジプトの棒術、棒踊りであり、剣舞との共通点が見られます。
チャタル・ヒュユク：新石器時代の壁画に描かれた狩りの踊りには、剣舞の原型と見られるものがあります。
軍楽隊、マーチングバンド：剣舞の要素を取り入れたパフォーマンスが行われることがあります。
ダンスと格闘技：奴隷が格闘技の練習を隠すためにダンスに偽装した「カポエイラ」や、ギャングがカンフーなどを取り入れて行った「ブレイクダンス」など、剣舞とは異なるルーツを持つ舞踊も存在します。
殺陣、京劇: 武器を使った芝居という点で、剣舞と共通点があります。



剣舞は、その多様な形式と歴史的背景から、世界の文化を理解する上で重要な要素の一つと言えるでしょう。

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